2023年9月19日
建設業界で働いていると必ず目にする「意匠図」。設計図面の中でも建物の見た目やデザインを伝える図面で、建築設計の要とも言われています。しかし、設計や施工の仕事に関わっていない方からすると、意匠図の重要性や他の図面との違いについてよくわからないという方も多いでしょう。そこで今回は意匠図をテーマに、基本的な構成や種類について詳しく解説します。
そもそも「意匠図」とは、建物や製品のデザインを視覚的に表現するための図面のことで、設計者やデザイナーがデザインやコンセプトを伝えるために使用されます。意匠図には、外観や形状、色彩、材質などのデザイン要素が盛り込まれており、建築設計における意匠図は、建物の外観やレイアウト、ファサードのデザイン、内部空間の配置などを記載します。
意匠図は、クライアントや施工者などの関係者に完成イメージを伝える重要な図面になります。意匠図にデザインのアイデアを具体的に示すことで、打ち合わせを円滑に進めることができます。
建物の設計図は、主に「意匠図」「構造図」「設備図」の3種類に分けることができ、その中でも「意匠図」は建物の設計を行う際に最初に作成される図面です。そのため、意匠図は平面図や立面図、展開図、パースなどの基本的な図面を複数作成し、視覚的な情報を中心に伝えます。建物の配置や内部の間取り、仕上げに関わるデザインなどを図面にすることで、クライアントや施工業者との打ち合わせをスムーズに進めることができます。
また、他にも建物の基礎や柱、梁といった構造躯体に関する構造図や、給排水、ガスや電気、空調といった設備図も作成することで、建物の概要をわかりやすく伝えることができます。
他にも、意匠図と関わりの深い図面として、構造を表す「構造図」や設備関係の配置などを表す「設備図」なども重要な図面になります。
構造図は、柱、梁、床スラブ、基礎など建物の構造部分について描かれた、建築の構造を示す図面のことです。寸法や形状、材料、接合方法などの詳細な情報を含んでおり、建物の強度や耐震性能などを決定する重要な図面です。全ての建物のデザインは、安全な構造体の上で成り立っているため、意匠図の要となる存在です。
設備図は、建築物や施設における設備の配置や配管、配線、機器の配置などを示す図面のことで、建物内部の設備器具の位置や配管ルートなどを明確に表現し、設計者や施工者が設備の設置や配線、メンテナンスなどを適切に行うための指針となります。
建物の設計ではもちろんのこと、改修やメンテナンスの際に使われる重要な図面であり、設備の配置や接続関係を正確に理解し、効率的かつ安全な設備の設置や運用を実現するために不可欠な情報源です。
意匠図と施工図はどちらも建築設計において重要な図面ですが、それぞれ特徴が異なります。「意匠図」は、上記でも説明の通り、建物の外観や空間デザインに関する情報を提供するための図面です。そのため、建築家やデザイナーが作成し、クライアントや関係者にコンセプトやデザインのイメージを伝えるために使用されます。その一方で「施工図」は、建物や構造物の実際の施工や建設に関する情報を提供するための図面で、主に施工業者が施工方法を現場の作業員に伝えるために作成します。
意匠図 | 意匠図は建物のデザイン段階で作成され、建物の外観や内部空間の魅力や機能性を表現するための図面 |
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施工図 | 建築プロジェクトの実際の建設工程において、建築現場の作業員や関係者が必要な情報を提供するための図面 |
建物を設計する上ではどちらも重要な図面ですが、意匠図と施工図では役割が異なることを押さえておきましょう。
続いて、意匠図の基本的な構成について解説します。意匠図では、主に下記の3つが重要となります。
平面図とは、建物や室内の配置やレイアウト、道路や地図の計画、建物の周りのデザインなど、空間の構成や配置を表現するために使用されます。平面図は、空間の長さ、幅、面積、位置関係、移動経路などの情報を記載します。平面図は、意匠図のなかでも最も基本となる図面で、平面図を基準とし様々な図面を作成します。
立面図とは、建物や物体の正面や側面の外観を垂直方向から見た図面です。建物の外観やファサードのデザイン、窓やドアの配置、建物の高さなどを表現するために使用されます。立面図は、基本的に平面図と併用され、建物の外部のデザインや要素をより具体的に理解するために使われることが多い図面です。
断面図は、水平断面(地面から上方向への切断)や垂直断面(横方向からの切断)など、特定の方向からの視点を持って描かれる図面です。イメージの場所の一部を切り取って表示することで、内部の構造や特徴を見せることができるため、建築分野の設計図面では重要な役割を果たします。
上記では平面図、立面図、断面図についてそれぞれの特徴を紹介しましたが、意匠図には実は他にも重要な図面がたくさんあります。そこで以下では、平面詳細図・矩計図、天井伏図、展開図、配置図について紹介します。
平面詳細図とは、平面の細部にわたり、寸法・仕上げなどの詳細な情報を盛り込んだ図面で、一般的に平面図よりも縮尺が大きく、施工上最も重要な図面のことです。平面図よりもさらに細かい図面になるため、情報量が多い点が特徴に挙げられます。
平面図では省略されることの多い、下記のような情報が盛り込まれることが多いです。平面的な位置関係や具体的な距離感が、数字や情報で把握できる図面です。
矩計図(かなばかりず)とは、建物の一部分を垂直に切断して、建物の高さ、各階の床の高さ、基礎や天井裏など各部分の寸法と、材料・下地の種類などが記入されている図面です。以下などの情報がわかるため、建物を建てる際によく使用されます。縮尺は1/20~1/50で描かれることが多く、詳細断面図と呼ばれることもあります。矩計図により、仕上げ材や断熱材など、その他各部材の仕様や納まりが明記されています。
天井伏図とは、建物の各室の天井面を下から見上げた図面で、照明器具や設備器具の位置などが記載されています。天井伏図は一般的に平面図と同じ縮尺で描かれます。照明器具や設備機器は、専門的な記号で表現されていることが多いので、図面を確認する際は図面記号もあわせてチェックしましょう。
展開図とは、建物の室内の中心から北、東、南、西の四方を見た図面です。建物の天井高、や建具や窓、開口位置や高さ、室内に設置する家具の高さ関係を確認できます。また、設備器具の位置、仕上げ方法などが示されるので、建物と内部の高さ関係が把握できる図面です。展開図があることでコンセントなどの位置を確認したり、造作家具の使い勝手を想像したりすることができます。以下などがチェックできるので、設計内部や各アイテムの高さ関係を把握したいときに確認する図面です。
配置図とは、建物の配置や敷地との位置関係を示した図面で、建築意匠図の中でも最も基本的な図面になります。主に建物内の部屋や設備の配置を示し、ビルのフロアプランや敷地内の建物のレイアウトなどが把握できます。配置図があると、空間の効率的な活用や機能の最適化を図るために、配置や配置関係を視覚的にとらえることができます。意匠図を作成する際に最初に作られる図面です。
「意匠図」とは、建物や製品のデザインを視覚的に表現するために作成され、外観や形状、色彩、材質などのデザイン要素が盛り込まれている図面です。建築設計における意匠図は、建物の外観やレイアウト、ファサードのデザイン、内部空間の配置などが記載されます。
建設業界に携わっている方や転職を考えている方は、意匠図がクライアントや施工者などの関係者に完成イメージを伝える重要な資料であることを把握しておきましょう。