建築図面とは何か?種類や作成ポイント・コツを丁寧に解説
コツ
種類
建築
設計
ポイント

建築図面とは何か?種類や作成ポイント・コツを丁寧に解説

2023年10月25日

建築図面とは、建築物を建てるために必要な図面一式を指します。全体の概要がわかるものから細部までの詳細を記したものまで多岐に渡り、各図面にはそれぞれ特徴があります。設計の初期段階から竣工までの間、数多くの図面をもとに内容を決定していきます。
そこで今回は「建築図面とは?」というテーマで、建築図面の詳細について解説いたします。建設業界で働く予定の方、今後建設業界へ転職を検討されている方は最後までご覧ください。

 


 

建築図面とは

建築図面は、建築物の設計や施工に必要な情報を図や記号を使って表現したものです。建築図面は建築プロジェクトの様々な段階で作成され、建物のデザイン、構造、詳細な仕様を決定するために作成します。建築図面は建築士、エンジニア、施工業者など関係者間でのコミュニケーションに不可欠であり、建築図面をもとに建物の詳細が決定していきます。

どのような図面か

建築図面には、平面図(建物の上から見た図)、立面図(建物の正面や側面の図)、断面図(建物を切った断面の図)、詳細図(窓やドアなどの詳細を示す図)などが含まれます。これらの図は建物の形状や寸法、材料、配置、設備などの情報を提供し、建築物を実際に構築するためのガイドとなります。

 

基本設計図とは

基本設計図は、建物のコンセプトや用途、外観、基本的な構造、間取りなどを示す図面です。建築プロジェクトの初期段階で作成され、クライアントや関係者との合意を得るための基本的な設計案を表現します。基本設計図は、建物の全体像を理解する上で非常に重要な図面になります。

 

実施設計図とは

実施設計図は、基本設計を更に詳細化し、実際に建物を建設するための具体的な設計を示す図面です。建物の構造、仕様、材料、施工方法などが詳細に記載され、建築士やエンジニアが建物を設計・監理する際の基準となります。また、実施設計図には施工業者による見積りや工事の実施に必要な情報が描かれています。

 

施工図とは

施工図は、実施設計に基づいて建物を実際に施工する際に必要な詳細な図面です。施工図には、建物の構造や寸法、材料の配列、施工方法、工程計画などが含まれており、施工を行うときの指針となります。建設会社や施工業者が工事を円滑に進めるためのガイドとなり、工事現場での実際の作業に必要な情報が描かれている図面です。

 

実施設計図の種類

実施設計図は建築プロジェクトの詳細な設計情報を示す図面であり、建物の具体的な形状や構造、設備などを明確にするために使用されます。この図面は施工段階において、建築士、エンジニア、施工業者とのやりとりを円滑にし、建物を実際に建設するための指針となります。

意匠図

意匠図は、建物の外観やデザインを示す図面です。建物のファサードや外部のデザイン、窓の配置、出入り口の位置など、建物の見た目に関する詳細が描かれています。図面の意図としては、建物のデザインを表現し、クライアントや関係者が建物の計画を把握しやすいようにする役割があります。

 

構造図

構造図は、建物の骨組みや基本的な構造を示す図面です。建物の耐荷重構造や基礎、柱や梁の配置、床や天井の構造などが詳細に描かれています。構造図は建物の安全性や耐久性を確保するために不可欠であり、施工業者が安全な建物をつくるために必要不可欠な情報です。

 

設備図

設備図は、建物の設備に関する情報を示す図面です。建物内部の配管、配線、空調、電気設備などが詳細に示されています。この図面は、快適な生活や作業環境を提供するために重要であり、施工業者や関連する専門家が設備を正確に配置し、適切に動作するようにするための基準となります。

 

設計段階で作成する建築図面

建築プロジェクトでは、建物を設計・施工するために複数の段階で様々な図面が作成されます。設計段階で作成される主な建築図面は以下の通りです。

基本設計図

基本設計図は、建物の設計の初期段階で作成される図面です。建物の概要やコンセプト、間取り、外観などを示し、クライアントとの合意を得るための設計案として機能します。基本設計図はプロジェクトの方向性を決定し、後続の設計作業において重要な基盤となります。

 

確認申請書類

建築物を建設する際には、地方自治体に対して確認申請を行う必要があります。この際に提出される図面や書類が確認申請書類です。確認申請書類には建築物の外観や間取り、構造計算書、耐震性などが含まれます。地方自治体の審査を通過することで、正式な建築許可を得ることができます。

 

施工図

施工図は、実際に建物を施工するための詳細な図面です。基本設計をもとに、建物の構造、設備、仕上げ材料などを具体的に示します。施工図には建物の寸法、材料の仕様、配管や配線の配置などが含まれ、建築業者が建物を実際に建設するための指針となります。

 

竣工図

竣工図は、建物が完成した後の状態を示す図面です。実際に建物が建設された後の正確なデータを図面に反映させます。竣工図には完成した建物の外観や内部配置、設備の位置などが記載され、建物の実際の状態を文書化します。竣工図は建物の保守管理や改修工事において重要な情報源として活用されます。

 

建築図面を作成するときのポイント

建築図面の作成方法には、一定のルールが設けられています。作成するときのポイントを押さえて、読み手に伝わる図面を作成しましょう。

用紙・サイズ

建築図面を作成する際には、適切な用紙サイズを選ぶことが重要です。一般的にA1、A2、A3などの規格が使われますが、プロジェクトの規模や図面の詳細度に応じて適切なサイズを選びましょう。内装などの場合はA3サイズが多いですが、建築などの面積の広い工事の場合はA1を選ぶことが多いです。適切なサイズで図面を描くことで、読みやすく作業効率を高めることができます。

 

線の太さ・種類

図面の線は適切な太さと種類を選ぶことで、情報の伝達を明確にすることができます。主要な線には太めの線を使用し、寸法や補助情報には細い線を使うなど、適切な使い分けが必要です。また、実線・破線・点線などを適切に使い分けることで、図面の内容が伝わりやすくなります。線の太さや種類を意識し、コミュニケーションの取りやすい図面を目指しましょう。

 

図面の記号

図面には様々な要素を記号で表現します。例えば、ドアや窓、設備などは図面上で特定の記号を使って示します。これらの記号は建設業界で標準化されている場合が多いので、ルールに従い、適切な記号を選択するようにしましょう。ドアであれば、記号一つでドアの種類(開戸・引き戸など)や開く方向を指示することができます。作図する際にはひとつひとつの記号を理解して使うようにしましょう。

 

寸法の表記・補助記号

図面上の寸法は、建物や空間の計画をイメージする際に役立ちます。主要な寸法は数値で示し、必要に応じて寸法線や寸法記号などの補助記号を使って明確にしましょう。寸法の表記が適切であれば、施工時に正確な寸法を把握することができるため、建物の品質向上に役立ちます。作図をする際には必ず記載しなければならない項目です。

 

JIS規格の規定

建築図面の作成は「JIS規格」に従うことが一般的です。JIS規格とは、日本産業規格(JIS=Japanese Industrial Standards)を指し、日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた日本の国家規格のことです。建築図面を作成する際には、適切なJIS規格を遵守する必要があり、安全なプランニングを行うためには欠かせないポイントです。

 

建築図面を作成するコツ

最後に、建築図面を作成するコツについて、3つほどご紹介します。

① 一定のきまりは守る

建築図面は、建物を設計・施工する際の基本的な情報を表現するためのツールです。図面の作成には一定の規則やルールが存在するため、そのルールを理解し、守ることが重要です。JIS規格に基づく正確な記号の使用や、線の種類と太さの適切な使い分け、寸法の正確な表記など、一定のきまりを守ることで伝わりやすい図面を作成することができます。

 

② 要望を取り入れる

建築図面は、クライアントや利用者の要望を反映させることが大切です。建物の用途やデザイン、機能性など、クライアントが求める要素を図面に取り入れることで、クライアントの満足度を高めることができます。クライアントの意向をしっかりと把握した上で作図することが重要になります。

 

③ 分かりやすさを重視する

建築図面は多くの関係者が参照するため、分かりやすさを重視することが大切です。図面上の情報は誰でも簡単に理解できるように工夫し、不明確な部分を排除するようにしましょう。また、適切な記号や色の使用、寸法の表記や補助記号の追加、図面のレイアウトなどを意識すると分かりやすい図面になります。建築図面は施工業者やデベロッパーなど、プロが目にする図面だからこそ、ルールに則り分かりやすさを重視しましょう。

 

まとめ

建築図面は、建築物の設計や施工に必要な情報を図や記号を使って表現したもので、プロジェクト関係者間でのコミュニケーションに不可欠な資料です。全ての計画の基となる資料だからこそ、必要な情報を漏れなく記載することが大切です。
また、建築図面の作成では、作図ルールを守り、クライアントの要望を分かりやすく伝えることが大切です。設計業務は着想などが問われる仕事ですが、建築図面の作成は正確性とスピードが問われます。これらのスキルは数をこなすことで得られるので、基本を押さえた上で建築図面の作図に向き合うようにしましょう。

 


SHARE