2024年9月3日
施工開始時から完了までの工程を記録した工事写真をまとめた台帳は、施主に対して適切な施工が行われたことを示す証憑(しょうひょう)です。この工事写真を撮影する際に使用される黒板は、建設現場の品質管理において重要な役割を果たしています。黒板は工事そのものや進捗状況に関する情報を正確に記録・伝達する手段ですので、その書き方を押さえておくことが大切です。
本記事では、工事写真における黒板の書き方や撮影のコツ、エクセルで台帳を作成するメリット・デメリット、業務効率化につながるアプリの活用について解説します。施工管理に携わる工事関係者の皆さんは、ぜひ参考にしてみてください。
工事写真は工事着手前および工事完成時の確認はもちろん、施工管理の手段として使用されます。例えばコンクリート打設工事後に目視できない鉄筋が、打設前に問題なく組まれていたか施工状況を確認する際にも工事写真は使用されるのです。
しかし、工事写真の被写体を見ただけでは、何が写っているのか認識しづらいことがあります。そこで工事写真台帳の読み手の理解を助けるために、その被写体と一緒に撮影されるのが撮影状況を記載した黒板です。そのため黒板の書き方は、5W1Hを意識することが重要になります。ここでは、黒板に書く項目について詳しく見てきましょう。
※参考元:「工事写真の撮影マニュアル」(奈良県土木部)http://www.pref.nara.jp/secure/58369/satueimanualH14.pdf
工事写真は、工事の検査時には記録資料として、工事完成後に問題が生じた場合には証拠資料として利用されます。施工途中に何らかの理由で被災してしまい手戻りが生じた場合には、損害額を算出するための基礎資料となるのです。
上述の通り、工事写真は重要な役割を果たすために、適当に撮影することはできません。ここでは、押さえておきたい撮影のコツをご紹介します。工事写真の撮り方でお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
主任技術者の特徴は、以下の通りです。
工事写真の撮り方で重要なポイントは、写真1枚あれば5W1Hを把握できる構図になっていることです。工事写真の5W1Hとは、次の情報となります。
黒板のほか、必要に応じて大きさを正確に見せるために、スケールを添えて撮影することが大切です。
撮影のタイミングを逃さないためにも、工事計画を事前に撮影しておき、いつでも確認できるようにしておきましょう。 施工が適切に行われたかどうかを後から見返す際に使用されることから、工事写真を撮影するタイミングはとても重要です。
工事計画が画像として保存されていれば、工事写真をチェックするついでに次の撮影タイミングを確認できます。工事計画が変更される度に撮影しておけば、プロジェクト履歴の管理に役立つのでおすすめです。
撮影した工事計画の画像は、施工現場などで使用するスマホやパソコンを介して他のメンバーと情報共有しましょう。情報共有によって、工事写真の撮り忘れも防ぎやすくなります。
全景の定点撮影においては、完成後の建物や構造物をイメージしながら構図を考え、すべてが入る撮影スポットを探すことが重要です。高い建物や大きな構造物の完成後に、全景が入りきらないといった事態を避けるようにします。
定点撮影とは、同じ地点から同じアングル(構図)で定期的に撮る手法です。天気の良い日を選んで、毎回同じ時間帯に撮影します。毎回スムーズに撮影するためにも、黒板の定位置をあらかじめ決めておきましょう。
工事写真を見た際に、黒板に記載された文字が判読できないようでは意味がありません。照明や太陽の光が黒板に反射すると、記載された文字がよく見えなくなるため注意が必要です。光の反射する角度に注意しながら、黒板の文字がはっきり判読できるように撮影しましょう。
デジタル化の影響で、公共工事においては「工事完成図書」を電子納品しますが、画像の編集・加工は一切認められていません。国土交通省が定めた「デジタル写真管理情報基準」によると、「写真の信憑性を考慮し、写真編集は認めない」と明示されています。トリミングや明るさの調整なども認められないため、工事と無関係のものは片付けてから撮影することが大切です。工事写真を撮影したら、編集・加工なしでも提出できるかどうかを確認するようにしましょう。
※参考元:「工事写真の撮影マニュアル」(奈良県土木部)http://www.pref.nara.jp/secure/58369/satueimanualH14.pdf
「【工事写真の撮り方:建築編】よくわかる撮影ポイント4点(株式会社ミライ工事)」https://www.miraikoji.com/column/1343/
施工時に撮影した工事写真をまとめ、工事の品質を証明する役割を担っているのが工事写真台帳です。デジタル化が進んでいる昨今、手書きで工事写真台帳を作成する企業はほとんど存在しないのではないでしょうか。エクセル利用以外に工事写真台帳を作成する方法は、専用アプリの活用です。専用アプリを活用した場合と比較すると、工事写真台帳をエクセルで作成するメリットは次の3つが挙げられます。
ここでは、それぞれのメリットについて見ていきましょう。
導入コストをかけずに工事写真台帳を作成できる点が、エクセルのメリットです。マイクロソフト社が開発し、主にオフィス利用を想定したアプリケーションソフトのパッケージ「オフィスソフト」は、近年ではほとんどの企業で導入されているでしょう。とくにエクセルは表計算ソフトの代表格であるため、単体で利用している企業もあるかもしれません。
オフィスソフトであれ単体であれ、業務でエクセルをすでに利用している企業であれば、ソフトの導入コストは新たにかかりません。
使い方についてトレーニングの時間を設けなくても、エクセルなら工事写真台帳の作成にすぐに取り掛かれる点がメリットです。エクセルは広く普及しているため、実際に日頃から業務で利用している企業も多いでしょう。エクセルの基本操作に慣れている人たちがたくさんいるため、操作方法を一から覚えたりほかのメンバーに教えたりする手間がかかりません。
無料でありながら、さまざまなテンプレートの中から自社に合ったテンプレートを選べる点がエクセル利用のメリットです。
インターネット上には、工事写真台帳の無料テンプレートが数多く公開されています。早速「工事写真台帳 エクセルテンプレート」と検索してみましょう。
専用アプリを活用した場合と比較すると、工事写真台帳をエクセルで作成するデメリットは次の3つが挙げられます。
ここでは、それぞれのデメリットについて見ていきましょう。
エクセルを利用しても、黒板作業の効率化には繋がらない点がデメリットです。撮影するたびに手書きで黒板に記入したり、適切なサイズ感や反射などに留意して黒板の入れ方を工夫しながら撮影したりするのは、かなりの手間がかかります。
一方、電子小黒板付きの工事写真アプリを使えば、電子小黒板を端末に保存可能です。黒板の持ち運びがなくなり、テキストをデジタル情報として管理できます。よく使用する黒板をお気に入り登録したり履歴入力もできるため、黒板作成の効率化および省力化に繋がるわけです。
また、常にテキストが見やすい状態で黒板と被写体を一緒に撮影できるため、写真の取り直しが大幅に減ります。
台帳を作成する際に、工事写真データをパソコンに移行する手間がかかる点がエクセル利用のデメリットです。また、黒板の内容に合致するように、写真を分類して保存する作業にもかなり手間がかかります。
一方、工事写真アプリを使うと写真のフォルダ分けが自動で完了する点がポイントです。目視に頼った写真の仕分けが不要になるため、写真整理業務を大幅に効率化できます。
パソコン内蔵のハードディスクドライブ(以下、HDD)やUSBメモリなど物理的なストレージへの保存は、セキュリティ面で問題があります。データ保存先のセキュリティを担保できない点が、エクセル利用のデメリットです。HDD故障時はデータ復旧が難しいほか、USBメモリや外付けHDDには盗難や紛失のリスクがあります。一方、工事写真アプリの場合の保存先はクラウドです。クラウドサービス事業者が提供するデータセンターは極めて堅牢であるため、災害時のBCP(事業継続計画)対策としてもクラウド利用は注目されています。
「IP制限」「ユーザーの多要素認証」「操作ログ」などでセキュリティ強化を実施しているアプリを選べば、機密情報である工事写真を守りやすくなるでしょう。
ここでは、黒板作業の効率化に興味がある方に向けて、工事写真アプリ3選をご紹介します。
「ミライ工事」は撮影・台帳の編集・出力までスマホで完結でき、「工事写真台帳を現場でつくる」を可能にするアプリです。
電波の通じない現場では、オフラインモードへの自動切替が行われます。そのため、どのような電波環境であっても工事写真の撮影が可能です。さらに、クラウド同期オフモードにすると、電波の強弱に関係なく写真報告書を編集できます。
利用人数5人以上の法人プランでは、リアルタイムデータ共有・共同作業が可能です。
※株式会社ミライ工事公式サイト:https://www.miraikoji.com/
「Photoruction(フォトラクション)」は、施工管理の生産性向上を支援するクラウドです。施工管理の業務プロセスを効率化することを目的としたアプリで、建設生産に必要な機能がすべて搭載されています。
工事写真台帳の作成にもちろん対応しており、工事写真の自動整理、写真のフォルダ管理、電子小黒板、書類管理、電子納品が可能です。さらに、セキュリティ基準が厳しい企業は、IPや端末制限などのセキュリティオプションを利用できます。
※株式会社フォトラクション公式サイト:https://www.photoruction.com/
「アイピア」は、リフォームや住宅工事に携わる建設業界向けの管理システムです。建築業やリフォーム業の効率化に特化した機能がまとめて搭載されており、工事台帳などあらゆる書類・図面・写真を一元化・見える化できます。
また、すべてのデータは工事情報や顧客情報に紐づけてGoogleドライブで保管・管理されており、必要な資料をいつでもどこでも探し出せる点がポイントです。
※株式会社アイピア公式サイト:https://aippearcloud.com/
工事写真は「工事経過の記録」「使用材料の確認」「品質管理の確認」「維持保全の資料」「問題解決の資料」として使用することを目的に撮影されます。工事写真の構図の一部である黒板は、写真だけでは把握しづらい情報を補足するために不可欠です。5W1Hを意識しながら黒板の書き方をマスターすれば、正確性を重視する工事写真の撮影時間の短縮につながります。また、撮影した後に必要な工事写真の整理業務も煩雑になりがちです。そこで、効率的に工事写真を管理するためには、今回ご紹介したような専用アプリの導入も検討すると良いでしょう。