2024年10月29日
ベンチマークは敷地や建物の高さの基準点となり、その後の工事に大きく影響するため、正しい知識を身に付けておくことが大切です。測量のやり直しや工事の失敗を防ぐためにも、ベンチマークの設定方法からしっかりと把握しておきましょう。
今回は、ベンチマークとは何か、という基礎知識から、ベンチマークが関わる測量現場の将来性まで解説します。
ベンチマークの知識は、施工管理に関わる上での基礎知識および建築測量において役立ちます。ベンチマークとは何か、またその重要性について詳しく把握しておきましょう。ベンチマークは工事の基礎部分における高さの基準点となるため、正確さが求められます。
ベンチマークは、敷地や建物の高さの基準点となるもので、短縮表記では「BM」と表します。ベンチマークを基準に工事を行うため、工事中も撤去されることはありません。そのため、ベンチマークは動かない物を基準にすることが大切です。ベンチマークによく使われる物の例としては、道路上のマンホールや縁石などがあります。他には、地面に杭を打ってベンチマークにすることも可能です。
ベンチマークは高さの基準点になるため、工事に必要なその他の高さの数値などはベンチマークを元にして割り出されます。そのため、ベンチマークは動かない物を基準にし、位置がずれないようにすることが大切なのです。ベンチマークがずれてしまうと、測量のやり直しや工事の修正などが必要になるほか、最終的に建物が傾く原因にもなります。大きな失敗につながる可能性があるため、ベンチマークの正確な設定はとても重要です。
ベンチマークを設定することは大がかりな工事が必要な作業ではありませんが、選定基準をよく把握し適切な場所に設定することが大切です。また、設定においては、複数個所に設けるなどのポイントもおさえておきましょう。
ベンチマークを選定する際に大切なのは、動いたりずれたりする可能性のない物を選ぶことです。工事中でも撤去されない物を選ぶようにしましょう。道路上のマンホールの蓋や縁石がよくベンチマークに使われるのは動かないからです。ただし、道路そのものは通行する車によって高さが下がってしまう可能性があります。そのため、道路上の一点などを選ぶのは避けるようにしましょう。また、電信柱は工事中に移動したり、ブロック塀は再建築したりすることもあるため、工事中に動かさないものであることを今一度確認しておくこともポイントです。
ベンチマークにする場所を決めたら、印を付ける、看板にベンチマークであることを書いて近くに置く、などによってベンチマークだとわかるようにします。マンホールなどの場合は、目立たないように印を付けるなどの配慮も必要です。また、新たに杭を打ってベンチマークにする場合には、動かないようにその杭の周りを養生しておきましょう。
基準とするベンチマークの地点を決めたら、レベルと呼ばれる測量機器やスタッフと呼ばれる長い定規を使って数値を測ります。また、ベンチマークは2ヶ所以上設置しておき、それぞれ相互に確認が取れるようにしておくこともポイントです。
ベンチマークは設計において重要なポジションのため、建築図面にも「BM」として場所が書かれています。また、ベンチマークは設計GLとの関係性とあわせてよく解説されるため、設計GLの知識もおさえておくとよりわかりやすくなるでしょう。
ベンチマークは、高さの基準となるため、ベンチマークの地点が0となります。「BM±0」として、他の地点の高低差を見出し、ベンチマークよりどれくらい高いか、または低いかの数値を割り出します。
建物を建てる上でベンチマークに伴い必要になる基準に、「設計GL(グランドライン・グランドレベル)」がありますが、設計GLはベンチマークを基準に設定されます。設計GLは、建物が建つ地面の高さを意味しており、例えば住宅の場合は庭の高さに関係する地盤基準点の数値です。
設計GLは、ベンチマークからの高さの差によって「BM+100」や「BM+200」などのように表されます。単位はミリメートルで、設計GLがベンチマークより100mm高い、または200mm高いという意味になります。
設計GLは、周辺環境への影響から、基本的に元の建物があった高さと同じにすることが望ましいといわれることもありますが、いずれの場合もその建物に適した設計GLを設定することが大切です。設計GLが高すぎてしまうと玄関までの勾配が急になり、反対に設計GLが低すぎると雨水が流れ込むなど、トラブルにつながることがあるため注意しましょう。
このように設計GLは建物を建てる上で重要な基準となりますが、設計GLはベンチマークに基づいているため、ベンチマークの数値が適切であると共に、設計GLと整合性がとれていることも大切なポイントです。
ベンチマークは設計基準の観点からも重要な役割を担っていますが、ベンチマークが遠方にあると測量が大変になることがあるでしょう。このような場合、工事のために一時的に仮ベンチマークとして仮の水準点を設けることがあります。仮ベンチマークの表記は「KBM」です。仮ベンチマークもベンチマークと同様に、マンホールの蓋や縁石などの動かない物を対象にしましょう。
施工管理技士には、建築のほか、土木や造園などさまざまな種類があります。測量の業務は測量士が担うとしても、ベンチマークに関することは図面のほか工事自体に大きく関係するため、ベンチマークを含む測量の知識があると作業を行う上で役立つでしょう。トラブルを回避するためにも、ベンチマークや設計GLの重要性に対する理解を深めることは大切です。
ベンチマークや設計GLにおいては、さまざまなトラブルが発生することがあります。測量の段階でのミスだけでなく、建築会社とお客様との間で見解が一致していないことなども原因となります。測量を正確に行うことだけでなく、設計GLにおいての盛土や切土などについてもお客様の希望に沿うように厳密に設計することなどが必要です。こうしたさまざまなトラブル例を知っておくとより役立つでしょう。
ベンチマークにまつわるトラブルには、基礎的な問題点も関係しています。基礎知識や注意点を改めておさえると共に、さまざまな工事における失敗例も参考に対策を考えていきましょう。
ベンチマークにまつわる一般的な問題点として、測量時のミスが挙げられます。測量時の失敗例としては、レベルの読み方を間違えた、スタッフを正しく使えていなかった、という機器の使い方が原因のケースもあります。計測自体を間違えてしまうと、設計通りに工事を行うことができず、大きくずれが出てしまうため注意が必要です。また、ベンチマークと設計GLの関係が曖昧だったり、適切でなかったりすることも問題につながります。建物の基礎部分の数値のため、建物が出来上がったときに大きなトラブルを引き起こす可能性があるでしょう。希望通りの建物になるよう適切な数値設定と設計通りの工事を行うことが大切です。
ベンチマークを適切な場所に設置すると共に、その後の測量では、測量機器の使い方を改めて把握し、正しい使い方をおさえておくことが大切です。また、高低差の計算も間違いのないように行いましょう。仮ベンチマークは、ベンチマークからの間で複数地点を測量しながら設置されますが、その際の許容誤差の確認でミスをしないことも注意点です。
ベンチマークと設計GLの関係では、道路に設けたベンチマークより、家が建つ場所の設計GLの方が低いケースもあります。そのままでは、雨水が家の方に流れてしまうため、外構工事も十分に計画することが必要です。設計GLは、法律に従って建物の高さ制御を行う際にも関係するため、建物全体を通して検討することが役立ちます。
ベンチマークが関わる測量は、時代の変化に伴い新しい技術が取り入れられています。ベンチマークの基礎知識を身に付けた後は、将来的に携わる最新技術の知識を身に付けておくことも日々現場に立つ上で役立つでしょう。
近年、測量技術はITによってさまざまに進化しています。ベンチマークの設置や設計GLの設定などに使われるレベルやスタッフについても、デジタルレベルやバーコード付きスタッフなどによって、より精度の高い測定を短時間で行えるようになりました。3Dレーザースキャナーや、ドローンを使ったUAVレーザーなども登場し、デジタル化されたデータをタブレットやスマートフォンなどで管理することが可能です。これらの技術の進化によって、ベンチマークもまた、最適な技術に合わせた活用方法となるでしょう。
持続可能な建築では、地球環境へのメリットなどがある反面、手間がかかるなどのデメリットもあります。このような中で、3Dレーザースキャナーなどの進化した測量技術は、短時間で正確なデータを集められることから、持続可能な建築の観点からも注目されています。正確な数値を簡単に把握できれば、ベンチマークや設計GLなどに伴うトラブルも回避しやすくなるでしょう。