2024年11月26日
トランシットという機械をご存知でしょうか?トランシットとは測量の際に使用する機械のひとつで、角度を図るために重要なアイテムになります。建設系の会社で働いている方でも、測量作業に接点がないとあまり馴染みのない機械かもしれません。そこで本日は、トランシットに着目して、機械の特徴や使用時の注意点などを詳しく解説いたします。
トランシットとは、地理的な測量や地図作成に使われる測量器具の一種です。トランシットは通常、方位や水平角度を測定するために用いられます。望遠鏡やレーザーを組み合わせた測定器具で、地球の曲率や地理的な特徴を考慮しながら、地図や地形のデータを収集するのに役立ちます。この装置を使用して、建設プロジェクトや地図作成など、精密な測量作業が行われることがあります。
トランシットは精密な測量作業に使用され、地理的な特徴の記録や建設プロジェクト、地形学的な調査など多岐にわたる分野で役立っています。具体的には、以下のような場面で使用されています。
建設現場では、建物や道路などの建設において正確な位置決めや方位を求めるためにトランシットが使われます。建設の際に基準となる測量ポイントを設定するのに役立ちます。
トランシットは地形の特定のポイントの方位や角度を正確に測定するために使用されます。地図を作成する際に、地理的な特徴を記録するのに役立ちます。
鉱山や採掘現場では、地下のトンネルや鉱脈の調査、採掘エリアの配置などにトランシットが役立ちます。採掘地点やトンネルの正確な位置を特定するために使用されます。
トランシットとセオドライトは発祥地に違いがあるものの、基本的には同じものを指します。トランシットはアメリカ、セオドライトはヨーロッパで、アメリカでは使いやすさを重視しているため、角度表示が目盛り読みのものが多くあります。一方でセオドライトは、角度表示を液晶画面にデジタル表示にしており、精密性を重視して作られています。現在では、呼び方を統一し「セオドライト」と呼ばれることが増えてきました。
光波とは電磁波の一種で、この「光波」を利用して距離を測定することを「光波測量」と言います。光波では、基準点から目標点に光を発射し、反射した光を電子的に解析して「距離」を計測します。つまり、トランシットは「角度」を測量するのに対し、光波は基準点からの「距離」を計測する点が大きな違いです。測量において距離と角度を正確に測ることが重要視されるため、トランシットと光波を組み合わせた計測器「トータルステーション」などが活用されることもあります。
トランシットは角度を測定するのに重要な機械として、さまざまな分野で使用されています。以下では、トランシットが使用される分野について紹介します。
建築分野では、建物の位置決めから方向の指定、測量作業まで、様々な段階でトランシットが活用されています。例えば、建物や基盤の位置を正確に決めるためにトランシットを用いて建築物の位置決めとレベリングを行います。建物が正しい位置に建設され、水平で安定した建物にするために欠かせない作業です。他にも道路や敷地内の構造物を配置する際に方向を指定する際に役立ちます。
また、土地の測量や地形の特定のポイントを測定する際もトランシットが使用されています。建築物の基準点や地形の特徴を測量し、設計段階で正確な情報を得るために必要不可欠な機械です。
また、土木分野においても、建設プロジェクトの測量や設計、構造物の建設など幅広い範囲で使用されます。正確な位置決めや測定を行い、安定性や構造の確保に貢献しています。
例えば、道路や高速道路の建設では、トランシットを使用して道路のレベリングや勾配を設定します。道路の傾斜やカーブを正確に測定し、建設中の勾配や高さを調整する際に役立ちます。また、橋梁の建設では、トランシットが橋の位置や高さを正確に決定するのに使用されます。基礎の設置や構造物の位置合わせ、垂直度の確保などに活用されます。
他にも堤防やダムなどの水工学的な構造物の建設でも使用されており、レベルや高さを測定し、構造物の安定性を保証します。
様々な分野で使用されているトランシットには3つの種類があり、それぞれ機械の特徴が異なります。以下ではトランシットの種類について解説します。
まず一つ目は、光学タイプのトランシットです。このトランシットは、分度盤の角度情報をもとに光学的に拡大して読み取ることができます。
次に二つ目は、レーザー照射で角度を測定するトランシットです。
集光ビームと平行ビームの両方を使用できたり、レーザー出力を多段階に調整できたりするので、さまざまな機能を使用したいときにオススメです。
そして三つ目のデジタルトランシットは水平儀のことで、任意の点と点の間の水平角を自動で計測することができます。使い勝手に合わせて機能を選ぶと、効率的に作業が行えるようになります。
トランシットを使った測量を行うときの手順について、一つずつ解説していきます。
まずはトランシットを固定する三脚を設置します。トランシットは水平が保たれていないと正確な角度が測れないため、三脚の設置は重要なポイントになります。トランシットの三脚は、出来るだけ平らで地盤が硬い場所に設置しましょう。
三脚の設置が完了した後は、台座にトランシットを取り付けます。
トランシットは精密機械なので、本体を設置する際は絶対に落とさないよう配慮しながら作業を行いましょう。トランシットにある求心望遠鏡を覗き、測点が中央になるよう三脚の位置を調整します。
概ねの位置が確定した後は、整準ネジを使ってトランシットの傾きを調整します。気泡管の中にある気泡が中心にあるかどうかを確認し、トランシットが水平になるよう調整します。
位置と傾きを調整した後は、ピントを合わせます。クリアに見えるように微調整を行い、測量を実施します。
最後にトランシットにおける注意点について解説します。以下の注意点を守ることで、トランシットを使用した測量作業において正確で信頼性の高い測定を行うことができます。
トランシットの望遠鏡を通して見た景色は、実際の距離感とは異なる場合があります。望遠鏡を通して見たものが近くにあるように見えることがありますが、実際には遠くにあることもあります。この距離感の違いを理解し、正確な測定を行うためには、トランシットの視野を正しく解釈することが重要です。
トランシットは正確な測定を行うために、水平で安定した場所に設置する必要があります。地面が平らでない場所や不安定な地面では、正確な測定が困難になる可能性があります。測量作業を行う際には、トランシットを安定した台座や三脚に設置し、水平度を確認することが重要です。
トランシットは、建築や土木など様々な分野で使用されている機械です。地理的な測量や地図作成に使われる測量器具ではあるものの、構造物を立てる際の基準決めなどで使用します。重要なアイテムなので、使い方や注意点を正しく理解した上で使用するようにしましょう。
また施工管理の仕事では、墨出しやレベルチェックといった、構造物の仕上がりに関わる重要な基準を決めるためにトランシットを使用することもあります。トランシットの使い方がわかると、効率よく測量が行えてスムーズに現場を進めることができます。ぜひトランシットの使い方を覚えて、施工管理の仕事に活かしてみてください。
