金属管工事とは?金属管の種類や施設場所、施工の注意点を解説
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金属管工事とは?金属管の種類や施設場所、施工の注意点を解説

2024年12月11日

金属管工事とは何か、を説明するのは、難解な面もあります。金属管工事について調べていくと、さまざまな決まりがあり、これらの既定や注意点を覚えるだけでも大変な作業です。しかし、ひとつひとつおさえていくことで、その他の工事に役立つ情報も身に付くため、金属管工事への理解を深めることはメリットの多い作業でもあります。
この記事では、金属管工事の施設場所や、金属管の種類、工事でよく挙げられる注意点をまとめました。金属管工事の知識を詳しく身に付けるきっかけとして、参考にしてみてください。



 

金属管工事とは

電線は、むき出しのまま使用するとさまざまなトラブルが伴います。例えば、屋外で電線をそのまま垂らしていると、火災の原因や感電の危険性など、大きな被害につながる可能性があるため厳重に気を付けることが必要です。そこで役立つのが、電線を中に入れて保護する電線管です。電線管には、電線を隠ぺいして直接見えないようにすることで美観を保つ役割もあります。
金属管は、電線管の一種で、金属製の管の中に電線を通して使います。この金属管を利用して配線を行うのが、金属管工事です。

 

金属管工事を施設する場所

金属管は耐久性に優れていて、衝撃や直射日光にも強いことから、多くの電気工事に利用されています。施設する場所の制限がほとんどなく、全ての場所に施設可能であることが特徴です。
ただし、金属管工事はどんな場所でも万能というわけではなく、木造住宅では木造部分に施設しないようにするなど、安全のために決められたルールに従って工事する必要があります。
低圧屋内配線の場合、絶縁電線を用いることや、金属管内で電線に接続点を設けない、といった施設にあたっての決まりがあります。「電気設備の技術基準の解釈」の第159条に書かれている詳しい内容と共に、金属管工事の前にしっかりと注意点をおさえておきましょう。

 

金属管工事で使用される電線

上記の解説の中でも触れましたが、金属管工事では、どの種類の電線を使うべきかの決まりがあります。金属管工事で使用されるのは絶縁電線ですが、「屋外用ビニル絶縁電線(OW線)」は使えません。使用される電線としては「600Vビニル絶縁電線(IV線)」がよく挙げられています。
また、絶縁電線の導体について、より線を使用することもポイントです。単線の場合は直径3.2mm以下のもの、アルミ線の場合は4mm以下のものを使うなどの決まりがあります。ただし、短くて小さな金属管を使用する場合は、これらの決まりが限定されていません。金属管工事ではその都度、問題のない電線かどうかを確認するようにしましょう。

 

ケーブル工事との違い

金属管工事について調べていると、ケーブル工事との違いに疑問を持つときもあるでしょう。金属管や絶縁電線を使うのが金属管工事、ケーブルを使うのがケーブル工事と呼ばれており、工事そのものについては明らかな違いがあるわけではありません。絶縁電線とケーブルの違いをおさえておけば、金属管工事とケーブル工事との違いをスムーズにイメージすることができるでしょう。金属管工事に使われる絶縁電線は、電気の通る導体が絶縁体で覆われています。それに対してケーブルは、絶縁体で覆われたものをさらにシースと呼ばれるものが包んでいます。このように、絶縁電線とケーブルは作りの違いがあるため、工事材料としての用途も異なるのが特徴です。

 

金属管工事を行う場所の種類

 

露出配管

露出配管は、展開した場所に行う金属管工事です。展開した場所としては、例えば、駅のホームや、露出している天井や壁面などがありますが、点検できる隠ぺい場所と点検できない隠ぺい場所以外の場所、という捉え方もできます。近年ではリノベーションでデザインに露出配管を取り入れる例もあるため、一般的な住宅の室内で露出配管を行う場合もあるでしょう。室内の天井に金属管を固定する場合は、壁に穴を開けて器具を使うなどして支持固定します。屋外の露出配管では、雨の影響や絶縁電線の損傷などを防止する措置も必要です。

 

点検できる隠ぺい場所

点検できる隠ぺい場所は、点検口がある場合の天井裏や、押し入れなど、簡単に点検ができる場所のことを意味しています。点検できる隠ぺい場所への金属管工事は、湿気や水気がある場所でも可能ですが、その場合は防湿措置を行う必要があります。また、金属管工事に限りませんが、メタルラス張りやワイヤラス張り、金属板張りの木造の造営物に工事する場合は、金属管が電気的に接続しないように絶縁して施設することが大切です。また、腐食防止も心掛けておきましょう。

 

点検できない隠ぺい場所

点検できない隠ぺい場所は、点検口もなく簡単に点検ができない場所を意味しています。例えば、天井ふところや壁の中などがあり、建物を壊さないと入れないところです。点検できない隠ぺい場所への金属管工事は、普段点検ができない箇所ということもあり、トラブルがないようにより慎重に施工することがポイントです。金属管工事に使用する金属管は、管の厚みや支持間隔などが具体的に既定されています 。細かい部分までよく確認し、計画を把握した上で工事を行いましょう。

 

金属管の種類

金属管工事で使う金属管には、いくつかの種類があります。「ねじなし電線管(E管)」「薄鋼電線管(C管)」「厚鋼電線管(G管)」の主な3種類について、違いをおさえておきましょう。ねじのありなしについては、金属管本体にねじ切り加工がしてあるかどうかの違いがポイントです。
また、「ねじなし電線管(E管)」「薄鋼電線管(C管)」「厚鋼電線管(G管)」はどれも、棒状になった直管電線管です。金属製の電線管にはほかに、曲げ加工ができる「金属製可とう電線管」という種類もあります。「電気設備の技術基準の解釈」では、「金属可とう電線管工事」の既定は金属管工事とは別の項目となっているため、あわせて確認しておくと良いでしょう。

ねじなし電線管(E管)

「ねじなし電線管(E管)」は、電線管本体にねじが切られていないところが特徴です。ねじ溝が必要ないため、その分内径が大きいことから、電線を少し多めに入れたいときにも役立ちます。管の接続には専用の部品を使いましょう。ねじありの電線管の接続と比較すると防水性に劣りますが、ねじなし電線管は軽量で施工しやすいところがメリットです。使われる場所としては、屋内の露出配管や、天井裏などが挙げられます。

 

薄鋼電線管(C管)

「薄鋼電線管(C管)」は、電線管本体にねじ切り加工が施されています。ねじなし電線管よりは金属の厚みがありますが、全体的に見ると厚みは薄い方で、使い勝手が良いのが特徴です。重さも軽めで扱いやすいことから、幅広い工事に利用されています。強度としてはそれほど優れていないため、ねじなし電線管と同じく、屋内の露出配管や、天井裏などで使用することが多いです。

 

厚鋼電線管(G管)

「厚鋼電線管(G管)」も、電線管本体にねじ切り加工が施されています。さらに、管面に溶融亜鉛メッキが施されているため、肉厚であることが特徴です。上記の2種よりも重量がありますが、その分強度が期待できます。衝撃に強く、耐候性や耐腐食性があることから、屋外で使用することができるのもメリットです。

 

金属管 の施工方法

金属管工事には、さまざまな技術と知識が必要になります。金属管は、切断したり、曲げたりして使うことができるのも特徴です。また、支持金具などを使って金属管を固定しますが、このような部分的な作業にもそれぞれ既定があります。ここでは、金属管の施工方法でよく挙げられる、曲げ加工と支持方法についてのポイントを簡単に解説します。

 

金属管の屈曲のきまりに注意して曲げ加工する

金属管は、パイプベンダーを使って好みの角度に曲げることが可能です。金属管を屈曲する際は、金属管を曲げたときの内側の半径が、金属管の内径の6倍以上で、曲げる角度が90度を超えてはいけない、というきまりがあります。配管のボックス間においては、曲げる箇所の数やそれぞれの角度の合計値にもきまりがあるため、詳しく確認しておくと良いでしょう。

 

支持間隔に注意して金属管を支持(固定)する

金属管を支持する際には、サドルなどの支持材を使って固定します。支持にあたっては、支持点間距離ともいわれる、金属管を取り付けるときの間隔も意識するようにしましょう。具体的には、2m以下、という数値が挙げられています。金属管の支持についても、事前に既定を確認しておくと安心です。

 

金属管工事の注意点

金属管工事にはさまざまな既定があり、注意すべきことがたくさんあります。ここでは、よく挙げられる注意点をまとめました。日頃の知識確認などにもお役立てください。

 

金属管内では電線に接続点を設けない

金属管工事でよく挙げられる注意点に「金属管内で電線に接続点を設けないこと」があります。この注意点は、金属可とう電線管工事や合成樹脂管工事に関する既定などにも同じことが書かれているため、注意点が関連する工事もあわせて覚えておくと役立ちます。
電線を接続するときは、器具などを取り付けるときにも使う、アウトレットボックスなどのボックスの中で行うようにしましょう。

 

電磁的平衡のため金属管の太さを確認する

金属管工事で、管に電線を収納する際には「電磁的平衡」に気を付ける必要があります。電線の周りに生まれる磁力線によって、金属管が発熱したり、うなり音が出たりするのを防ぐため、1回路の電線は全て同一の金属管に通すように注意しましょう。

 

異なる太さの電線を同一管内に収める場合の占積率は32%以下

電磁的平衡をとるためには、金属管の太さ選びも大切です。金属管の選定では「異なる太さの絶縁電線を同一管内に収める場合の占積率は32%以下」という注意点をおさえておきましょう。絶縁電線は、絶縁被覆を含めた断面積で計算します。金属管の方は、外径から厚みを除いた内径で面積を計算することがポイントです。

 

使用電圧が300V以下の場合はD種接地工事を施す

金属管工事でも、感電や火災などのトラブルを防ぐために、金属管と大地を電気的に接続する「接地(アース)」の工事が必要です。接地工事には、A種、B種、C種、D種の4種がありますが、金属管工事では300Vを境目にした注意点がよく挙げられます。使用電圧が300V以下ならD種接地工事、300Vを超えて接触防護措置を施さない場合はC種接地工事です。

 

D種接地工事を省略できるケース

使用電圧が300V以下の場合はD種接地工事を施すことが決まっていますが、条件が合えばD種接地工事を省略できるケースもあります。
4m以下の金属管を使って、乾燥した場所に施設するときは、D種接地工事の省略が可能です。また、金属管の長さが8m以下で、対地電圧が150V以下、乾燥した場所に施設するか簡易接触防護措置を施す場合も、省略が可能とされています。

 

まとめ:電気の知識を身に付けながら 金属管工事への理解を深めよう

金属管工事は多くの規定に従い、その都度注意点をおさえて工事する必要があります。電磁的平衡や接地など、注意点には電気にまつわる専門知識も関わるため複雑に感じるときもあるでしょう。とはいえ、これらの注意点には個々に理由があり、興味を持って知識を蓄えることで自然と身に付くこともあります。金属管工事への理解を深めながら、安全で適切な工事を行いましょう。



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