建設プロジェクト成功の鍵:バーチャート工程表の全知識
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建設プロジェクト成功の鍵:バーチャート工程表の全知識

2024年12月20日

着工日から竣工日までに実施される各作業を記載した工程表は、進捗管理・作業管理などに使用される重要な書類です。建設現場で使用される工程表にはいくつか種類があるために、それぞれの特徴を把握して使い分ける必要があります。中でもバーチャート工程表は、シンプルな体裁で作成しやすく、よく活用されている工程表です。本記事ではバーチャート工程表とは何か、その作成方法、トラブルシューティングなどを詳しくご紹介します。



 

バーチャート工程表の基礎知識

工事の規模や工期、使用する目的によって適切な工程表を選択することで、生産性の高い工程管理が可能になります。ここでは、建設工事などで活用されることの多いバーチャート工程表の基礎知識をおさらいしましょう。

 

バーチャート工程表とは

バーチャート工程表とは、縦軸に作業項目、作業箇所・区間を、横軸に日付を記載した上で、バー状の横棒で工種ごとに色分けして、作業の実施日を 示した工程表です。自分が担当する作業のスケジュールと、完了までに必要な日数を一目で把握できるという特徴があります。シンプルな構成であるため、手軽に作成できる一方、それぞれの作業項目の進捗管理はできません。そのためリソースの割り振りや、作業の進行具合の把握など進捗管理には不向きです。

 

バーチャート工程表を使用するメリット

バーチャート工程表のメリットは、作成しやすい点と工事完了日の意識を共有しやすい点の2つです。
作業項目と期間だけで構成されるので、紙とペンあるいはエクセルがあれば、誰でも短時間に作成できます。特別なプロジェクト管理ツールや工程管理ソフトウェアを用意する必要はありません。同様に、工程の管理や修正も簡単にできるため、一部の従業員に工程管理の負担をかけないで済むのです。
また現場スケジュールを単純な表で可視化できることから、誰もが一目でスケジュールを把握でき、工事完了日の意識を共有できます。建設現場の知識がない施主でも、工事の進み具合への理解がはかどるのです。マンション大規模改修工事等のケースでは、掲示板に貼り出しておけば、住民からの問い合わせに対する施工管理者の説明負担を軽減できるでしょう。

 

バーチャート工程表の作成方法

バーチャート工程表はシンプルな構成であるために、作成自体は簡単です。しかし精度の高い工程表を作成するためには、バーチャート工程表の書き方のステップに従って行う必要があります。ここでは、バーチャート工程表の作成方法のステップについて見ていきましょう。


 

バーチャート工程表作成のステップ

作成の基本ステップは、次の4つです。

1.施工に必要な作業内容の洗い出し

バーチャート工程表を作成するにあたり、はじめにスケジュールを管理したい作業内容を全て書き出して把握します。作業内容の洗い出しは、縦軸に書き出した作業項目を記載するために必要な作業です。後から作業の漏れが発覚すると、スケジュールが乱れてしまうので、正確性を期すためにも全て書き出すようにしましょう。

2.作業の工程と期間の設定

作業内容の洗い出しの次に、作業を進めていく順序や段階(工程 )と期間の設定を行います。工事に着手してから作業の順序を変更すると、修正の手間はもちろん、現場の混乱を招きかねません。作業の工程が決まったら、作業期間を設定します。作業期間の見積もりは、工程ごとの作業量や必要な人員を考慮しながら決めましょう。予期せぬトラブルが発生しても対応できるように、作業期間には余裕を持たせておくことが大切です。

3.リソースの調達タイミングの決定

工事の遅延を防ぎ、決められた工期を遵守するためにも、調達のタイミングも合わせて検討することが大切です。重機、材料、職人を調達できなければ、工程表通りに作業を進められません。作業内容を明確にして、工程と期間を決定したら、現場で使用する重機の搬入、資材や作業員の手配を「どのタイミング」で「どの協力業者」から調達するかを決めましょう。

4.上役から承認を得る

最後に、自らが作成したバーチャート工程表が現実的に実行可能なものかどうか、上役に見せて承認を得ることが大切です。 契約期日までに、施主に建物の引き渡しをするためにも、工程表は実行可能なものでなければなりません。第三者目線によるチェックを経て、作業の抜けや漏れがないかを注意深く確認しましょう。

 

工程計画におけるバーチャートの活用例

バーチャート工程表を使えば、工程計画時に各作業に対する作業員の割り当てを容易に行えます。スキルや経験を考慮しながら、各作業に適切に配置することで、作業員の負荷をできるだけ均等に分散させましょう。特定の作業員へ疲労が蓄積することを防ぎ、安全な作業環境の維持に役立つというわけです。

 

バーチャート工程表における効果的な工程管理

では効果的な工程の進捗管理のために、どのようにバーチャート工程表を活用すれば良いのでしょうか?ここでは、バーチャート工程表の役割や活用方法について見ていきましょう。

工程の進捗管理とバーチャートの役割

バーチャート工程表は、工期を遵守するためにプロジェクト全体を可視化し、各作業のスケジュール感を関係者間で共有できる重要なツールです。縦軸には作業内容が、横軸には日付が付されるシンプルな表示形式のために、各工程に設定されている作業期間を直感的に確認できます。誤認識が起きにくいことから、進捗状況が予定通りなのか、それとも遅れているのかを一目で誰もが把握できるのです。

 

遅延対策としてのバーチャートの活用方法

プロジェクト全体を可視化できるバーチャート工程表を作業所に貼り出すなどして、各工程の完了日を誰もが確認できるようにしましょう。着手後に想定よりも工数がかかり、遅延が生じる可能性を察知したら、作業員の数を増やすなどの施策をタイムリーに打てます。前工程の工期を短縮できる目処が立てば、調達を早めながらスケジュール前倒しで次工程に取り掛かることで、全体工期の短縮も可能です。

 

バーチャート工程表と他の工程管理ツールとの比較

ここでは、工程の進捗管理に活用されるガントチャート及びCPM(クリティカルパスメソッド)とバーチャート工程表の違いを比較します。

 

バーチャート工程表とガントチャートの違い

ガントチャート工程表の特徴は、横軸に日付ではなく「進捗率」を記載していく点です。ガントチャートでは、バーチャートのように予定工数を把握できないため、遅延を防ぐためには別途、工数管理をする必要があります。「この工程には5日間要する」といった情報は、ガントチャートからは読み取れないのです。

 

バーチャートとCPM (クリティカル・パス・メソッド) の比較

CPM(クリティカルパスメソッド)では、建設工事全体のスケジュールを「ネットワーク図」として作成する点が、シンプルなバーチャート工程表と大きく異なります。〇と矢印・曲線等 を使用する工程表なので、タイムスケールも含みません。

CPM(クリティカルパスメソッド) とは、特に大規模工事において、最小の投資額で遅延せずに計画が完了する最適解を導き出す手法です。前工程が終わらないと次工程に進めないといった依存関係にある複数の作業のうち、建設工事全体の作業開始から終了までを結んだ時に、最も時間のかかる作業経路がクリティカルパスと呼ばれます。

つまり遅延が許されない重要な作業のかたまりを、特定・把握することが可能です。各作業間の関連性や業種ごとの工程の流れを可視化し、複数の業種が作業する輻輳 (ふくそう)箇所を一目で視認できることから、万が一のトラブルの際にも迅速な対応が可能になります。

 

バーチャート工程表のトラブルシューティング

ここでは、バーチャート工程表の問題点と解決策、更新・修正のポイントについてご紹介します。

 

一般的な問題とその解決策

バーチャート工程表は、具体的な進捗状況や、複数の作業間の優先順位及び依存関係を把握できません。クリティカルパスを見極められないことから、工期の長い建設現場や複雑に工程が絡み合っている現場の進捗管理にバーチャート工程表は不向きです。進捗状況の把握を重視したい場合には、ガントチャートを選ぶと良いでしょう。特に業種や施工箇所が多く内容が複雑な 工事の進捗管理では、CPM(クリティカルパスメソッド)の採用を検討するのがおすすめです。

 

バーチャート工程表の更新と修正のポイント

エクセルでバーチャート工程表を自作すると、更新や修正などの編集作業の属人化が起こりやすくなります。そこでエクセルファイルの設定内容を、マニュアルなどで共有しておくことがポイントです。特にVBAやマクロなどを用いていると、作成者以外がエクセルファイルの内容をすぐに理解することは難しいでしょう。随時、工程表の変更や修正は必要になるために、属人化は作業の停滞を引き起こしかねません。

 

デジタル時代におけるバーチャート工程表の進化

業務の透明性を確保するためにも、プロジェクト管理ツール、あるいは工程管理ソフトウェアの使用も検討すると良いでしょう。ここでは、デジタル時代を迎えバーチャート工程表がどのように進化しているのかをご紹介します。


 

デジタルツールによるバーチャート工程表の作成

バーチャート工程表に適したアプリを導入すれば、視覚的に理解しやすいフォーマットを利用可能です。フォーマットを選べるため、工程表の作成時間を大幅に短縮できます。リアルタイムでデータを更新できるようになることから、最新の進捗や予定を工事関係者間で共有可能です。スマートフォンやタブレットを活用すれば、いつでもどこからでも建設工事の進捗や予定を確認できるようになるので、意思決定もスムーズに行えるようになります。

 

バーチャート工程表の未来:AIとの統合

生成AIの登場によって、建設工事現場の働き方においても大きな変革が起きるかもしれません。実際に、すでにChatGPTを搭載したバーチャート作成ツールも登場しています。データをアップロードし、質問しながら、明瞭で分かりやすいビジュアルのバーチャート工程表を作成できるというものです。ビジュアル 分析用オートパイロット機能のほか、GPTによるデータ解析も可能なので、データの潜在能力を引き出せるようになるでしょう。

 

まとめ

施工管理者は、建設工事現場の状況に応じて工程表を使い分け、効果的な工程管理をする必要があります。各作業に対し適切な人員を配置し、工期短縮・段取り忘れの防止に繋げる努力が大切です。施主が要望する工期に間に合わせられるよう、プロジェクト管理ツール、あるいは工程管理ソフトウェアの利用も検討して見てください。



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