工事に携わる職人さんはプロですが、打ち合わせでの行き違いや図面上のミスなどで竣工後にやり直しが生じることがあります。このようなやり直しを「手直し」と言い、竣工後に出来るだけ早く対応することが求められます。手直しの対応次第で、お客さまからの信頼を失う危険があるため、工事において手直しは重要な作業のひとつです。
そこで今回は「工事における手直し」をテーマに、メリット・デメリットを解説していきます。

工事の手直しとは

工事における手直しとは、工事完了後などに、設計図書と異なる部分や施工不良があった場合に、該当箇所を是正することを指します。以下では、手直しについてより詳しく解説いたします。

一般的な手直しの意味

工事の進行中にはさまざまな問題や課題が生じることがあります。その中で、特に注目されるのが「手直し」の作業です。手直しは、工事の進捗や品質を向上させるために行われる調整や修正のことを指します。

手直しの種類

工事における「手直し」にはさまざまな種類があります。その具体例をいくつかご紹介します。

①設計変更に伴う手直し

施工が進む中で、設計図に変更が必要となる場合があります。これに伴い、工事の手直しや調整が必要となります。例えば、構造の強化や仕様の変更があった場合、それに対応するための手直しが行われます。

②材料の不適合による手直し

工事に使用される材料が予定と異なる場合、手直し作業が必要です。これは、建材の品質や性能が基準を満たしていない場合に発生します。手直しにより、安全性や耐久性を確保することが求められます。

③施工ミスの修正

作業員のミスやコミュニケーションの不足によって発生する手直しもあります。これは、建設現場でのコーディネーションやチェックの不備からくるもので、早期の発見と修正が重要です。
 
施主側からすると、どれも同じ手直しであることには変わりありませんが、「誰のミスで発生した手直しなのか」によって工事費用の負担先が異なってきます。設計変更による手直しであれば設計者負担になることが多いですし、材料の不適合や施工ミスであれば施工側の負担になるでしょう。

工事の手直しのメリット

建築や工事プロジェクトにおいて、手直し工事は避けられない課題ですが、その適切な実施には様々なメリットがあります。本記事では、手直し工事がもたらす品質確保、顧客満足度の向上、メンテナンスの一環、安全性の確保について詳しく探ってみましょう。

品質確保

一つ目は「品質確保」です。手直し工事は、工事の進行中に発生した誤差や不備を修正し、建物や構造物の品質を確保するための重要なプロセスです。施工の際には様々な要素が絡み合い、計画通りに進まないことがあります。手直しにより、設計図や基準に合致しない部分を修正し、建物の完成品質を向上させます。品質確保は、将来的なトラブルや損害を防ぎ、建物の耐久性や信頼性を高める一環となります。

顧客満足度の向上

二つ目は「顧客満足度の向上」です。手直しを行うことで、最終的な完成物の品質向上につながるだけでなく、顧客満足度を向上させる効果もあります。建築プロジェクトにおいては、完成物の外観や機能性がクライアントの期待に添えない場合があります。手直しを通じて、クライアントの希望に合致する仕上がりを実現し、満足度を高めることができます。コミュニケーションを重視した手直しは、プロジェクト全体の透明性を高め、信頼関係を築く一翼を担います。

メンテナンスの一環

三つ目は「メンテナンスの一貫です」。手直し工事は、単なる修正作業だけでなく、建物や構造物のメンテナンスの一環とも言えます。工事の進行中に発見された問題を解決することで、将来的なメンテナンスや修繕の必要性を軽減できます。定期的かつ適切な手直しにより、建物が安全で耐久性のある状態を維持することが可能となります。これは、建物の寿命を延ばし、継続的な利用価値を提供する重要なプロセスです。

安全性の確保

四つ目は「安全性の確保」です。建築物や構造物の安全性を確保するための不可欠な手段です。施工の際に発生するヒューマンエラーや不良な材料、設計ミスなどが原因で安全性に関わる問題が生じることがあります。手直しによりこれらの問題を修正することで、建物が適切な安全基準を満たし、住民や利用者の安全を確保します。安全性は建物の利用価値に直結するため、手直し工事は社会全体にとって重要な役割を果たしています。

工事の手直しのデメリット

追加コストがかかる

工事の手直しは、品質を向上させる一方で、追加のコストがかかるというデメリットがあります。手直し作業には、設計の変更や再施工などが含まれ、これには追加の資材や労働力が必要となります。予算が厳しいプロジェクトでは、手直しによる追加コストが予測外の負担となりえます。建設業者やクライアントは、手直しに伴う追加コストを事前に見積もり、計画に余裕を持たせることが求められます。
手直しに伴う追加コストの一因として、不適切な計画や設計が挙げられます。十分な検討や評価が行われないまま進められると、後の手直し作業によって発生する追加コストが増加する可能性があります。
 

スケジュールの遅延

手直し工事は、工程の修正や再施工が必要となるため、プロジェクトのスケジュールに遅延を引き起こす可能性があります。手直しによるスケジュールの遅れは、クライアントや関係者との契約や予定に影響を与えることがあります。
施工中に発見された問題や変更が手直しを必要とする場合、それに伴う作業は元々の計画外のものであるため、プロジェクトの進捗に適切な調整が必要です。また、手直しには検証や再検査の時間もかかり、これがスケジュールに追加の日数を必要とします。

信頼性への影響

手直し作業が頻繁に発生すると、プロジェクトの信頼性に影響を与える可能性があります。クライアントや関係者は、計画通りに進まない工事や手直しの頻発を不安視し、プロジェクトの信頼性やプロフェッショナリズムに疑念を抱くことがあります。
手直しは、計画や設計の不備、コミュニケーション不足などさまざまな原因に起因することがあります。これらの要因が継続的に問題を引き起こす場合、プロジェクトの信頼性に対する評価が低下する可能性があります。信頼性の低下は、今後のビジネスやプロジェクト受注に悪影響を及ぼす可能性があります。

作業の中断

手直し工事が行われる際、特定の作業や工程が一時的に中断されることがあります。これは、不適切な設計や施工ミスの修正が必要な場合や、新たな要件が追加された場合に発生します。作業の中断は、施工現場や作業者にとって不都合となり、効率的な作業の妨げとなります。
特に、手直し作業が頻繁に発生すると、施工のフローが乱れやすくなります。これにより、作業者のモチベーション低下や作業環境のストレスが増加する可能性があります。手直しによる作業の中断を最小限に抑え、スムーズな施工プロセスを確立することが重要です。

工事における手直しは重要な工程

工事における手直しとは、工事完了後などに、設計図書と異なる部分や施工不良があった場合に、該当箇所を是正することを指します。
工事の手直しは「単なる修正作業」だけでなく、品質確保、顧客満足度の向上、メンテナンスの一環、安全性の確保など様々なメリットをもたらします。工事の手直しを行うことで、より高い品質と安全性を持つ建物や構造物の完成が期待されます。
しかしながら手直しには、追加コストの発生、スケジュールの遅延、信頼性への影響、作業の中断といったデメリットが存在します。だからこそ、コミュニケーションの強化、品質管理の徹底などを通じて最小限に抑える努力が求められます。プロジェクトの成功には、デメリットの管理と同時に、手直し工事をプロセスの一環として適切に捉え、そのメリットを最大限に活かすことが不可欠です。
工事を行う際は出来るだけ手直しが発生しないように注意を払いながら進め、万が一手直しが発生した際には迅速に対応するように心がけましょう。