河川工事の種類や内容は?土木工事との違いについても解説
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河川工事の種類や内容は?土木工事との違いについても解説

2025年1月21日

河川工事とは、河川の環境整備や保全を目的とする工事を指します。地域によっては、台風や大雨で災害が発生することも考えられるため、災害防止策が取られています。河川工事は私たちの命や住む場所を守る重要な工事ですが、認知度はあまり高くないため「よくわからない」と感じる方も多いでしょう。そこで今回は、河川工事の種類について詳しく解説します。



 

河川工事とは

そもそも河川工事とは、河川の環境整備や保全を目的に行われる工事です。具体的には、水害防止のための堤防の設置や、床止めなどの土木工事が該当します。以下では、河川工事の概要についてお話しします。

 

河川工事は土木工事のひとつ

河川工事とは、水域や河川を対象とした土木工事の一環です。主に河川やその周辺の環境を整備し、改善するために行われます。この工事は、水の流れや土砂の移動、洪水対策などを含む幅広い要素にわたり、地域社会の安全性や生活環境の向上に寄与します。河川工事は土木工事の一分野であり、土木技術や環境工学などの専門的な知識が必要です。専門家の協力を得て計画され、実施されるこの工事は、地域の水環境において様々な問題に対処し、持続可能な社会を築くための一翼を担っています。

 

河川工事を行う目的と重要性

河川工事を行う主な目的は、河川やその周辺環境の改善と保全です。主な目的としては洪水対策や土砂の流出防止といった点が挙げられます。
洪水対策では、河川が氾濫することによる洪水被害を最小限に抑えるため、護岸工事や堤防の補修などの施策が含まれます。また、土砂の流出防止では、河川が土砂を運搬する一方で、過剰な土砂の流出が環境問題や地盤沈下を引き起こす可能性があるため、河川工事は土砂の適切な制御や調整を通じて土地の安定性を確保します。
上記の他にも、生態系の保護や水質改善、河川周辺の整備や公園の設置などの地域の景観を向上させ、住みやすい環境を作り出す目的もあります。
これらの目的を達成するためには、地域の特性や課題に合わせた計画が欠かせません。地域の自治体や関係者が協力し、総合的なアプローチで河川工事を進めることが求められます。

 

等級によって異なる河川の管理元

河川はその性質や機能に応じて様々な等級に分類されています。これに伴い、それぞれの河川は異なる管理元によって管理・保全されています。今回は、一級河川、二級河川、準用河川、普通河川のそれぞれに焦点を当て、それぞれの特徴や管理体制について探ってみましょう。

 

一級河川

一級河川は、その規模や重要性が最も高い河川に分類されます。これらの河川は国全体の水運や水利、洪水調節など、国家的な視点から極めて重要な役割を果たしています。そのため、一級河川の管理元は国家機関であり、国土交通省や地方自治体と連携して管理されています。
一級河川の管理には、大規模な土木工事やダム建設、護岸工事、水路整備などが含まれます。これにより、一級河川は国土全体において水環境を総合的かつ効果的に管理することが可能となります。また、一級河川はその重要性から、水質や生態系の保護にも特に配慮されています。

 

二級河川

二級河川は一級河川よりも規模や重要性が低い河川に分類されます。これらの河川は、地域ごとの水運や水利、洪水調節など、地方的な視点での重要な役割を果たしています。二級河川の管理元は、国土交通省や地方自治体であり、地域社会との連携が強調されています。
二級河川の管理には、比較的小規模ながらも必要な土木工事や水路整備が含まれます。これにより、地域ごとの水環境や生活環境の向上が図られます。二級河川の管理は地域密着型であり、地元の声やニーズを取り入れながら、持続可能な水環境を構築しています。

 

準用河川

準用河川は、その特性や需要に応じて一定の規模以上の河川が一級または二級に指定されなかったものを指します。これらの河川は、地域や利用目的によって様々な役割を果たしており、その管理元も地方自治体や国土交通省、農林水産省などが連携して担当しています。
準用河川の管理は、一級・二級に比べて柔軟で、地域の状況や要望に合わせて適切な施策が取られます。農業用水路や地域の景観形成、親水公園の整備など、多岐にわたる活用が可能であり、地域社会にとっての重要性が高まっています。

 

普通河川

普通河川は、特に指定がない一般的な河川を指します。これらの河川は、主に地域の生活環境や水資源供給に寄与しています。普通河川はその特性上、地方自治体が主体となって管理し、必要に応じて国土交通省や農林水産省とも連携しています。普通河川の管理は、生活排水処理や河川の清掃、緑地帯の整備など、地域住民の日常生活に密着したものとなっています。地域社会の声が直接反映されるため、地元の住民参加型の取り組みが盛んに行われています。

 

河川工事の主な種類

河川工事には、水環境や地域の安全性を向上させるために行われる様々な土木工事が含まれます。それぞれの工事は、河川の特性や課題に応じて計画され、実施されます。今回は、河川工事の主な種類に焦点を当て、その役割や目的について紹介していきます。
 

①【上流部】砂防工事

上流部では、豪雨や山からの土砂崩れなどによって、河川に大量の土砂が流入することがあります。砂防工事は、これらの土砂の流入を抑制するために行われます。具体的な施策としては、網状のフェンスや護岸の設置、植生の植栽などが挙げられます。これにより、上流部からの土砂流入を減少させ、河川の水環境を保護します。
 

②【上流部】地滑り防止工事

上流部では地滑りが発生する可能性があり、これが河川に土砂を供給する原因となります。地すべり防止工事は、地すべりの発生を防ぐための施策を指します。これには、崖の補強や崩壊を防ぐための柵やフェンスの設置、植生の増進などが含まれます。地滑りを防ぐことで、上流からの土砂供給を抑制し、河川の安定性を確保します。

 

③【中流部】築堤工事

中流部では、河川の水位を一定に保つために築堤工事が行われます。築堤は、河川の両岸に土砂や石などの材料を積み上げて作られ、洪水時や豪雨時において水を堤防内に収めることができます。これにより、周辺地域の洪水被害を最小限に抑え、安全な生活環境を確保します。

 

④【中流部・下流部】床止め工事

床止め工事は、中流部や下流部において河床の浸食や土砂の堆積を防ぐための工事です。河床が浸食されると、河川の深さが変化し、水流の安定性に影響を及ぼします。床止め工事では、護岸や石積みなどの施策が取られ、河床の安定を図ります。これにより、河川の流れが安定し、洪水時の被害を軽減します。

 

⑤【中流部・下流部】樋門工事

樋門工事は、中流部や下流部において水量の調整や流れの制御を目的として行われます。樋門は水門や水路を指し、河川の水量を調整するために使用されます。これにより、豪雨時や洪水時においても適切な水量を維持し、河川周辺地域の安全性を確保します。

 

⑥【全域】河道掘削工事

河道掘削工事は、河川の流れを改善し、水の滞留や浸水を防ぐために行われます。これにより、水流が円滑に進み、河川の洪水対策や水質改善が促進されます。河道の形状や勾配の調整、深化などが行われ、地域の水環境の改善が期待されます。
 

河川工事を始めるまでの流れ

河川工事は他の工事とは異なるステップで作業を進めていきます。以下では河川工事を始めるまでの流れをご紹介します。

 

ステップ1:河川管理者の許可を取得

河川工事を行う際には、河川管理者の許可が必要になります。
河川の等級を確認後、必要な場所へ許可を求めるようにしましょう。

 

ステップ2:工事用の仮設道路を整備

工事許可を取得後は、河川で工事用の仮設道路を整備します。河川工事は水上で作業することが多いため、工事の際の足場として使用します。

 

まとめ

河川工事は、水域や河川に関する様々な課題に対処し、地域社会の安全性や生活環境の向上を図るための重要な土木工事です。洪水対策や土砂の制御、生態系の保護など、多岐にわたる課題に対応するためには、専門的な知識と綿密な計画が不可欠になります。河川工事や土木関連の施工管理を目指す方は、河川工事の概要や種類について理解しておきましょう。


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