建築面積と延床面積の違いを詳しく解説!延床面積に含まれないものも紹介
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建築面積と延床面積の違いを詳しく解説!延床面積に含まれないものも紹介

2025年5月30日

建築面積や延床面積について正しく理解しておくことは、建築を行う上でとても大切です。建築はさまざまな既定に従って行わなければいけませんが、建物の面積にも個々に規定があります。また、工事を行う側として知っておくだけでなく、お客様に理解してもらえるように説明できることも必要になるでしょう。
この記事では、建築面積や延床面積、あわせてよく挙げられる敷地面積も含めて、それぞれの違いを解説します。延床面積に含まれない部分や建築面積にカウントされる部分、容積率や建ぺい率に関する事柄まで、関連する知識をまとめました。建築知識の再確認にもぜひお役立てください。



 

建築面積とは

建築面積は、「水平投影面積」と呼ばれる面積で表されます。水平投影という言葉からもわかるように、建物の真上から太陽の光が当たったときに、影となる面積です。建物を真上から見たときの面積、と覚えておくとわかりやすいでしょう。詳しくは、建物の外壁や柱の中心線で囲まれた部分となり、建物全体規模の面積になるため、人が入れるスペースを対象とした面積ではありません。
建築面積は、後ほど解説する「建ぺい率」にも大きく関わる内容です。また、バルコニーやひさし、地下室などの部分の扱いについても、計算に含まれるかどうかは個々に異なるため、どのような既定なのかを詳しく理解しておきましょう。

 

建物を真上から見たときの面積が建築面積

建築面積における「建物を真上から見たときの面積」は、建物の1階部分の面積をイメージしがちですが、建物の構造によって必ずしも1階の面積とは限らないため注意が必要です。例えば平屋のように1階建ての場合や、1階と同じ面積または1階よりも小さい2階がある建物の場合は、真上から見たときに1階の面積が一番広くなり、建築面積となります。
しかし、「オーバーハング」と呼ばれる、2階から上の部分が1階よりも張り出している構造の建物の場合、真上から見たときの面積は、2階以上の張り出した部分の面積となるでしょう。そのため、建築面積では、真上から見た面積を把握することがポイントです。

 

延床面積とは

延床面積(のべゆかめんせき)は、建物全体の各階全ての床の面積を合計した面積です。床面積は、外壁または柱の中心線で囲まれた壁芯面積を意味しています。延床面積は、「延べ床面積」や「延べ面積」と表記されることもあり、「建物面積」ともいわれることがあります。建築面積とは違い、各階の床の面積のため、移住スペースの把握にも役立つでしょう。
また、延床面積は、「容積率」を計算する際に重要な数値となります。容積率は、延床面積を敷地面積で割った値で、上限が定められているため、建物を建てる際には既定の範囲に収めなければいけません。敷地面積については、下部の見出しで別途解説します。

 

建物の全ての階の床面積を合計した面積と容積率

延床面積は、建物の全ての階の床面積を合計した面積のため、2階のある一戸建ての場合は1階の床面積だけでなく、2階の床面積も合計する必要があります。平屋の場合は、1階の床面積だけになるため、建築面積と同等の数値になることもあるでしょう。このように建物の階数によって延床面積も増えていくため、容積率が100%以上になることは珍しくありません。例えば100平方メートルの敷地に建てられる建物の容積率の上限が150%の場合は、延床面積は150平方メートル以下にする必要があります。
しかし、建物の構造は、吹き抜けやロフト、ベランダなどを含み、建物全体の面積においては、これらの部分も関係していきます。容積率が関係する延床面積では、延床面積に含むものと含まれないものがあるため、建物の構造におけるそれぞれの部分がどのような扱いになっているかを詳しく把握することが大切です。

 

延床面積に含まれないもの

延床面積に含まれないものを把握することは、容積率の対象となる面積を計算する上で役立ちます。延床面積として計算に含まれない部分としては、ロフト、吹き抜け、ベランダ・バルコニー、出窓、外部階段などがよく挙げられますが、これらの部分の面積が必ず除外されるわけではありません。個々に計算上の細かい規定があるため、含まれない場合がどこまでかの上限を把握しておくようにしましょう。
また、容積率を計算する際の延床面積については、下記のような駐車場や地下室などの場所についても緩和措置が設けられています。
●自動車や自転車の置き場は、その部分の面積が延床面積の5分の1までは含まれない。
●地盤面からの高さが1m以下の住宅の用途となる他階では、その部分の面積が住宅の用途となる延床面積の3分の1までは含まれない。

 

ロフト

ロフトは、住宅の天井を高くして部屋の一部を2層にすることでできるスペースです。専用のはしごを設けることで、多目的に使うことができますが、法律上は「小屋裏物置等」の扱いであり、一般的な部屋としては認められていません。ロフトは基本的には延床面積に含まれない場所ですが、含まれないようにするにはロフトとしての条件を守る必要があります。
ロフト部分は、高さを1.4m以下にすること、面積をロフトのある直下の階の床面積の2分の1未満にすること、などの制限が設けられています。また、はしごを固定しないこともポイントです。

 

吹き抜け

吹き抜けは、2階や3階などの複数階がある建物で、上階の床がない階にまたがる空間を意味しています。吹き抜けを作ることで、外からの光が入りやすくなり、開放感が生まれることがメリットです。この吹き抜け部分には床がないため、基本的に延床面積には含まれません。2階の床の一部が吹き抜けになっている場合は、その部分は2階の床面積から除外されます。
しかし、吹き抜けでも場合によって延床面積に含まれる例外が発生するケースもあるため注意が必要です。例えば、吹き抜け部分に渡り廊下やキャットウォークを設置した場合は、延床面積に含まれることがあります。下の階に設置した収納棚の高さが吹き抜け部分に達している場合も延床面積に含まれる可能性があり、吹き抜け部分に階段を設置する場合は設置の仕方によって算入かどうかが変わるため、個々に気を付けておきましょう。

 

ベランダ・バルコニー

ベランダとバルコニーはどちらも建物から屋外に張り出されたスペースです。ベランダとバルコニーの違いは屋根があるかどうかの違いで、屋根があるものがベランダ、屋根のないものがバルコニーです。また、1階の屋外スぺースで地面よりも少し高い位置にあるウッドデッキなどは、テラスに分類されます。加えて、屋根の上にスペースを作るものは屋上テラスと呼ばれています。
ベランダとバルコニーは外壁からの奥行きが2m以内であれば延床面積に含まれませんが、超えた場合は超えた分が算入されます。壁や屋根のないウッドデッキや屋上テラスは基本的に延床面積に含まれません。しかし、これらの場所は開放的であることがポイントになっており、例えばバルコニーに格子を設置すると延床面積に含まれることがあるため、その都度状況に合わせて確認すると安心です。

 

出窓

出窓は、建物の壁から外に張り出して作られた窓です。出窓のデザインは複数あり、台形や三角、弓型などさまざまで、室内からは窓辺に奥行きが生まれることで広々とした印象になります。張り出した部分のスペースには物を置くことができ、活用の幅も広がりますが、延床面積に含まれないようにするためには、既定の範囲で作ることが大切です。
条件として、出窓の突き出した部分の奥行きが50cm未満で、出窓の下部分が床から30cm以上の高さにあり、床から1.35mより上の部分の「見付面積」の半分以上が窓であること、などが既定されています。ただし、出窓の下に物入れがあったり、天井の高さまで窓になっていたりするなど、出窓と認められない場合は延床面積に含まれるため気を付けましょう。

 

外部階段

外部階段ともいわれる建物の外に張り出した屋外階段は、一般的に延床面積に含まれませんが、屋外階段にも条件があります。延床面積に含めないためには、階段の周長の1/2以上を外気に開放すること、外気に開放されている階段の天井から手すりなどの部分までの高さを1.1m以上、かつ階段全体の天井までの高さの1/2以上にすること、が必要です。
外部階段においてもこのように開放されていることが主な条件となりますが、玄関ポーチもまた、開放された屋外の用途であれば延床面積に含まれません。しかし例えば、玄関ポーチを囲いなどで覆い、閉鎖された空間にしてしまうと延床面積に算入されます。

 

敷地面積とは

建築面積と延床面積が建物自体に関わる面積を表しているのに対して、敷地面積は建物が立つ土地の面積を意味しています。敷地面積もまた、建築面積と同様に水平投影面積となり、真上から土地を見た際の面積です。そのため、でこぼこした土地や斜面になっている土地などの場合、実際の面積とは異なることがあります。
敷地面積は、建ぺい率と容積率の計算にも必要になる数値です。敷地面積の場合も、道路境界線としてセットバックした部分は敷地面積に含まれないといった、算入されない部分があるため注意しましょう。
敷地面積については、登記簿に記載されている面積と実測面積の違いによるトラブルや相談事例も見られます。混同しないためにも、あわせて「公簿面積」「仮測量面積」「確定測量面積」の違いをおさえておきましょう。

 

公簿面積

公簿面積は、法務局の登記簿に記載されている、地積と呼ばれる土地の面積のことを意味しています。記載されている面積は、かなり昔に測量された数値の場合があり、実測面積と違うことがあるため注意が必要です。実測面積を測った上で地積更正登記が行われ、地積測量図が新しくなっていればより信頼できる公簿面積となるでしょう。

 

仮測量面積

仮測量面積は、目的となる土地のおおよその面積を知りたいときに役立ちます。仮測量は現況測量ともいわれますが、下記で解説する確定測量とは違い、境界線が未確定のため確定測量ほど正確ではありません。公簿面積と比較して、おおまかに実測面積を把握したいときに参考になる数値です。

 

確定測量面積

確定測量面積は、確定測量によって割り出される面積です。公簿面積や仮測量面積と比較した際に、最も正確な面積となるでしょう。仮測量と違い、確定測量は、隣接する土地との境界線が確定しているのが特徴です。確定測量は正確な面積情報を得られるためメリットが多いものの、費用や時間がかかるため計画的に行うことが大切です。

 

バルコニーやひさしは建築面積にカウントされるのか?

建築面積は、建物を真上から見たときの面積と解説しましたが、延床面積で除外されるケースもあるバルコニーや、建物の外に張り出しているひさしなどが、建築面積にカウントされるのかどうかもおさえておきたいポイントです。建築面積についても、含まれる場合と除外される場合があるため、既定をよく確認しておきましょう。

 

1m未満の場合、計算に入らない

バルコニーやひさしが建築面積にカウントされるかどうかは、外部に突き出している長さが重要になります。突き出ている部分が1m以上の場合は建築面積に含まれますが、1m未満の場合は含まれません。1m以上突き出しているときには、先端から1m後退した部分が除外され、残りが含まれることになります。例えば、外壁の中心線から1.5m突き出したひさしは、中心線から50cmまでのところを建築面積に含めて計算します。

 

中庭やガレージは計算に含めるのか

建築面積の定義では、建物の外壁や柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積、ということもポイントです。庭では、四方を壁に囲まれた坪庭もありますが、中庭および坪庭は基本的に屋根がなければ建築面積には含まれません。
同様に、屋根や柱のない開放された駐車場スペースは建築面積に含まれませんが、屋根や柱のあるガレージやカーポートなどは建築面積に含まれるため注意が必要です。これらの場所は、「外壁のない部分が連続して4m以上」「柱の間隔が2m以上」などの複数の条件を満たすと算入が緩和されることがあります。
玄関ポーチや屋外階段は、どのように造られるかによって建築面積に含まれるかどうかが変わるため、ケースバイケースで確認すると安心です。また、地階は、天井部分が地盤面から高さ1m以下なら建築面積に含めずに計算することができます。

建築面積は建ぺい率で規定される

どの部分が建築面積に含まれるのかを詳しく把握する必要があるのは、建築面積が建ぺい率で既定されることが大きく影響しています。建ぺい率が設けられる目的は、建物が立つ敷地内に適度な空間を確保するためです。これにより、日当たりや風通し、防災など、暮らしの上で快適な空間が作りやすくなり、景観が保たれるなどのメリットにつながります。

建ぺい率とは敷地の面積に対する建物の面積の比率

建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積の割合のため、建築面積を敷地面積で割って計算されます。敷地面積が100平方メートルのところに、建築面積が40平方メートルの建物を建てる際の建ぺい率は、40%です。

 

建ぺい率は地域ごとに異なる

建ぺい率も容積率と同じように、上限が定められているため、既定の範囲に収まるように建築面積を調整しなければいけません。また、住宅地や商業地などの用途地域ごとに建ぺい率の上限は異なるため、建物を建てる地域の決まりをよく確認しましょう。目的とする地域の詳しい建ぺい率が知りたいときは、市区町村の役場の都市計画課に問い合わせる、または役場のHPなどから調べることができます。

 

建築面積と延床面積の違いを理解しよう

建築面積と延床面積は、表面上は該当する面積の部分の違いとなりますが、上記で解説したようにさまざまな事柄が関係するため、理解を深めた上で違いを把握することが大切です。既定に従うための計算に、含まれる部分と含まれない部分をそれぞれ確認し、ルールに沿った上でお客様の望む建物を建築できるように工夫していきましょう。



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