2025年9月16日
基礎工事は、建物の基礎となる部分の重要な工事です。この記事では、ベタ基礎を中心に、基礎工事の種類や、布基礎との違いなども解説します。ベタ基礎工事の工程と合わせて、工事の際に注意しておきたいポイントなどもまとめました。基礎工事の知識の再確認にもお役立てください。
基礎工事は、建物を建てる上で文字通り「基礎」となる部分の工事のため、重要な工程です。建物の土台として地盤と建物をつなぎ、長期間にわたって建物を支え続ける必要があります。基礎工事に不備があると、建物が傾いたり沈んだりする原因となるため、基礎工事はしっかりと行いましょう。
基礎工事には種類があり、地盤の状態に合わせて適切な工法を選びます。まずは、基礎工事の種類と、地盤に合わせた工法の見分け方からおさえていきましょう。
基礎工事は、大きく「杭(くい)基礎」と「直接基礎」の2種類に分けられます。地盤が柔らかく軟弱な場合は「杭基礎」、地盤が固くしっかりしている場合は「直接基礎」というのが一般的な見分け方です。
「杭基礎」は、杭を地中に打ち込むことで建物を支える手法です。「杭基礎」の中でも工法の種類があり、地盤の固さが現れる支持層と呼ばれるところまで杭を打ち込む「支持杭」と、多数の杭を打ち込んで摩擦によって建物を支える「摩擦杭」の方法があります。摩擦杭の場合は、支持層まで杭が到達しないため、地盤に比較的固さがあり安定していることが必要です。
直接基礎は、地盤に直接、建物の基礎となる部分を作ります。建物の重さは、支持地盤に直接伝わるようになります。
「ベタ基礎」は、鉄筋の入ったコンクリートを建物の床下一面に敷いて建物を支える方法です。建物の下の地面がコンクリートで覆われるスタイルで、大きな面で建物を支えられるため荷重が分散されます。利用におけるメリットは多数ありますが、寒冷地の場合は地中の凍結によって建物がダメージを受ける可能性があるため向いていません。
「布基礎」は、日本で古くから利用されている方法で、ベタ基礎と比較されることも多いです。ベタ基礎が、一面に鉄筋入りのコンクリートを敷くのに対して、布基礎は、鉄筋入りのコンクリートを柱や壁の下の基礎に使います。この基礎は、横から見たときに逆T字の断面をしており、立ち上がっている部分によって、負荷のかかりやすい建物の柱や壁を支える構造です。
面ではなく、点と線で支えるイメージで、面になる部分は、防水シートと薄いコンクリートを施す場合や、地面をむき出しにする場合などがあります。また、寒冷地の場合は、布基礎が使われやすい傾向があります。
「独立基礎」は、柱の下だけに基礎を造る方法で、「独立フーチング基礎」とも呼ばれます。ひとつひとつが独立した、単一の形が特徴です。主に、柱にかかる負担を支える役割を担っています。加重のかからない柱や地盤が強固な場合に適した方法のため、一般住宅ではあまり見かけない方法ですが、傾斜地に建てる際やデッキの基礎などには使われることがあるでしょう。
古民家などの伝統的な木造建築では、玉石を使った「玉石基礎」が見られますが、これも独立基礎のひとつです。
「SRC基礎」は、近年注目されつつある方法で、完全密封構造が特徴です。上記で解説したベタ基礎や布基礎などは床下に空間ができますが、SRC基礎は、砂利層で空間が埋められるため、床下自体がありません。鉄筋やコンクリート、布基礎などを組み合わせて形成され、内周部の柱受けにH型鋼材を組み込んでいるのも特徴です。
地面からの熱が伝わりやすくなるため「蓄熱床工法」とも呼ばれ、従来の問題点の解決に役立つさまざまなメリットがありますが、床下がないことによるデメリットもあるため総合的に判断することもポイントです。
ベタ基礎と布基礎の違いとしては、下記のようなメリットやデメリットが挙げられますが、どちらが良いのかはケースバイケースのため、一概にはいえません。近年のベタ基礎の普及によって布基礎とそれほどコストに差がない場合もあり、布基礎も防湿コンクリートの使用や補強によって耐食性や耐震性を上げることが可能なため、優先したいメリットに合わせて、デメリットの改善を工夫しましょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
ベタ基礎 | ・床下が一面コンクリートで覆われているため、地面に建物が直接触れないことから、湿気による腐食やカビ、シロアリ等の被害のリスクを抑えられる。
・鉄筋の入ったコンクリートの面全体で建物を支えるため、荷重を分散でき、耐震性や基礎自体の強度が期待できる。 |
・布基礎よりも鉄筋やコンクリートなどの資材が必要になり、残土も多く出るため、コストがかかりやすい。
・寒冷地では、地面の凍結によって基礎が持ち上げられ、建物が損傷する可能性がある。 |
布基礎 | ・鉄筋やコンクリートの使用量がベタ基礎よりも少ないため、コストを抑えられる。
・寒冷地でも、地面の凍結による影響を受けにくいため設置しやすい。 |
・床下部分が覆われていないため、地面の湿気が伝わりやすく、ベタ基礎よりも、腐食やカビ、シロアリ等の被害のリスクが高まる。
・立ち上がり部分によって部分的に建物を支えるため、部分的な強度は期待できるものの、耐震性や基礎自体の強度ではベタ基礎よりも劣る場合がある。 |
一般的な戸建て住宅の場合、基礎工事にかかる期間は約1ヶ月で、マンションの場合だと数ヶ月かかりますが、地盤の状態や工法によって工期は異なります。ベタ基礎工事は、地盤調査から行い、地盤の状態を整えてから、配筋やコンクリートを流す作業を行います。ベタ基礎と布基礎は特徴が異なるものの、工程に大きな違いはありません。
ベタ基礎工事は、最初に地盤調査を行うことから始めます。ベタ基礎を含む直接基礎には、地盤が固くしっかりしていることが必要なため、調査でよく確かめましょう。地盤調査は、新しく建てる場合だけでなく、解体後に建て替える際にも行います。地盤の状態によって、軟弱過ぎる場合は、地盤改良によって強固にすることが必要です。
地盤の状態が確認できたら、「地縄張り」や「遣り方」の工事に入ります。地縄張りは、敷地に縄やビニール紐などを張り、建物の位置を確認する作業です。その後、設計図面に従って、建物の詳しい位置や基礎の高さなどの情報を、杭などを使った仮設物で表していく、遣り方の工事を行います。
基礎を造るためにはまず、地盤を掘り起こす必要があります。これが「根切り(ねぎり)」や「掘削(くっさく)工事」と呼ばれる作業です。ショベルカーなどの重機や手作業によって、基礎を設置する範囲の地盤を掘り起こしていきます。ベタ基礎の場合は、建物の下全体になるでしょう。また、根切りの作業は、雨が降ると困難で危険も伴うため、雨天中止が基本です。
地盤を掘り起こした部分には、コンクリートを流す前に、砕石(さいせき)と呼ばれる人工的に小さく砕いた石を敷き詰めます。砕石を敷き詰めるのは、建物が沈まないように地盤をしっかりと固めるためです。砕石はただ敷くだけでなく、ランマーなどの機械を使ってさらに締め固めていきます。この作業は「地業」と呼ばれ、砕石を使う場合は砕石地業といいます。
「捨てコンクリート」は、砕石を敷き詰めた上に流し込むコンクリートです。「均しコンクリート」とも呼ばれることがあります。捨てコンクリートは、建物の強度を上げる目的ではなく、足場や墨出しの際に役立つものです。地盤面が平らになり、作業がしやすくなるほか、基準線を書くことで位置情報をスムーズに共有できます。
捨てコンクリートの流し込みや墨出しが整ったら、基礎となるコンクリートの中に入る鉄筋や、コンクリートを流し込む型枠の組み立てを行います。鉄筋を組む「配筋作業」は、基礎の強度に関わる重要な工程のひとつです。コンクリートを流し込んでからでは確認が不可能になるため、慎重に行いましょう。コンクリートを流し込む前には、鉄筋の配置や本数などが設計図通りになっているかを確かめる配筋検査が行われます。
配筋作業を終えたら、次は基礎となるコンクリートを流し込む作業です。ベタ基礎では一般的に、底面の部分と立ち上がり部分の2回に分けてコンクリートを流し込みますが、一度にコンクリートを流し込む「ベタ基礎一体打ち工法」という方法もあります。コンクリートの強度を上げるために、気泡を抜く作業も含め、丁寧に行うことが大切です。
コンクリートを流し込み終えたら、コンクリートの強度が増すまで、養生シートで覆って数日間待ちましょう。
コンクリートは、しっかりと固まって強度を発揮するまでにある程度の期間が必要です。その間にダメージを受けないように、適切な養生を行うと共に、工期のために期間を短縮しないようにしましょう。養生期間を終えたら、型枠を外します。ひび割れや欠けた部分などの不備がないかを確認し、仕上げを行えば完成です。
基礎工事は、建物の基礎として耐久性などに影響する部分であり、後から変更することが難しく、不具合によって取り返しのつかないトラブルに発展するおそれもあるため注意が必要です。残念ながら不具合や失敗例も複数挙げられ、お客様が気付いて心配するケースもあります。見落としを防ぐためにも、施工管理の視点からチェックポイントをおさえて、失敗例も参考に、しっかりとした基礎工事を行っていきましょう。
建物を実際に建てる際の最初のステップとなる地縄張りや遣り方の工事ですが、この時点でミスがあると、設計通りの建物を建てることができません。完成してから建築基準法違反になることもあるため、位置や数値の情報は正確に確かめましょう。
アンカーボルトは、地震や台風などによる強い力が加わった際に、建物と基礎が離れないようにする重要な役割を担っています。基礎がいくら頑丈でも、アンカーボルトの施工不良があれば肝心の建物に大きな被害が及ぶため、注意しましょう。
アンカーボルトが設置されているか、位置がずれていないか、間隔が適切か、高さが足りているか、など、さまざまな側面からしっかりとチェックすることが大切です。
基礎工事では、基礎のサイズが設計図通りに正確にできているかをよく確認しましょう。基礎工事は、建物の基礎全体を上から見下ろすように記載された「基礎伏図」と呼ばれる図面に従って造りますが、基礎のサイズを確認する際にも役立ちます。
失敗例の中には、現場でサイズのミスに気が付かず、施主が見た際に気付く例もあります。基礎のサイズミスは、その後の建物全体に影響する大きなトラブルにつながるため、早めに気付くことも大切です。
コンクリートは、しっかりと固まって強度を発揮するまでにある程度の期間が必要です。その間にダメージを受けないように、適切な養生を行うと共に、工期のために期間を短縮しないようにしましょう。養生期間を終えたら、型枠を外します。ひび割れや欠けた部分などの不備がないかを確認し、仕上げを行えば完成です。
基礎工事は、その上に立つ建物をしっかり支えられるものを造る必要があります。耐震性はもちろん、腐食やシロアリなどの被害を防ぐことや、建物の立つ地盤や気候なども考慮して適切な工法を選びましょう。個々の基礎工事の構造も考慮して、デメリット部分を改善できる方法も踏まえて選ぶと役立ちます。