2020年10月16日
社会環境は、IoTやAI、クラウド、5Gと目まぐるしく進化しています。土木・建築・設備工事においてもそれらの技術に対応することが必至となっています。その社会的な要請に応える形で、電気通信工事施工管理技士の資格試験が2019年にスタートしました。その需要は大きく、資格を取得することによるメリットは非常に大きなものがあります。
今回は特に、「2級電気通信工事施工管理技士」の概要(業務内容・メリット)や試験内容、取得方法について解説します。この記事により、2級電気通信工事施工管理技士を獲得する道程を歩みだすことができ、未来の電気通信環境に応える技術者になることができるでしょう。
電気通信工事施工管理技士の資格概要や業務内容、取得するメリットについて解説します。
電気通信工事施工管理技士は2019年から始まり、「一般財団法人全国建設研修センター」が試験を実施する新しい国家資格です。この資格を取得しますと、電気通信工事において監理技術者や主任技術者になることができます。
業務内容としては、下記の工事などを監理・施工します。
①有線電気通信設備工事:CATVケーブル工事、通信ケーブル工事など
②無線電気通信設備工事:衛星通信設備工事、携帯電話設備工事など
③情報設備工事:コンピュータ設備工事、監視カメラ設備工事など
④ネットワーク設備工事:LAN設備工事、無線LAN設備工事など
⑤モバイル通信用設備工事:放送用中継設備工事など
「専任の技術者」に該当する資格であり、監理技術者・主任技術者として従事可能であるため、IT時代において需要が増加する資格となります。それぞれ以下で解説します。
電気通信工事を施行する建設会社は、国土交通大臣もしくは都道府県知事による許可が必要となります。(軽微な工事を除く)建設会社は、営業所ごとに「専任の技術者」の配置を義務付けられています。「専任の技術者」に該当する資格の一つが電気通信工事施工管理技士です。この資格取得者は、一定期間以上の実務経験を有する者に限られますので、希少な存在となります。
建設業法により、特定建設業者が元請として4,000万円以上の工事を発注者から直接請負う場合、「監理技術者」を現場に配置しなければなりません。(建築一式工事の場合は6,000万円以上)
また、4,000万円未満の現場や下請工事には「主任技術者」を配置しなければなりません。そのため、1級電気通信工事施工管理技士を取得することで「監理技術者」として、2級電気通信工事施工管理技士の資格を取得することで「主任技術者」として従事できます。
1級と2級の違いは下表の通りです。
従事できる技術者 | 1級電気工事施工管理技士 | 2級電気工事施工管理技士 |
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特定建設業の 「営業所ごとに置く専任の技術者」 |
一般建設業の許可を得る際に必要な 「営業所ごとに置く専任の技術者」 |
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現場に配置する「監理技術者」 | 現場に配置する「主任技術者」 |
IT(Information Technology)技術やIoT(Internet of Things)の普及により、電気通信工事は多様化・複雑化・業際化しており、電気通信技術者の需要は高まっています。特に電気通信工事施工管理技士は需要に対して不足しているため、資格を取得すれば将来性・安定性に優れた技術者となることができます。
電気通信工事施工管理技士は、会社における経営事項審査の技術力評価の点においても、資格者1人につき5点が加算されるシステムになっています。公共工事受注の場合には、この得点が会社の技術力として評価されるため、会社の受注活動に対して貢献できることになります。
2級試験の受験資格は下表の通りです。
学歴 | 受験に必要な実務経験年数 | |
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指定学科卒業後 | 指定学科以外卒業後 | |
大学 専門学校「高度専門士」 |
1年以上 | 1年6ヶ月以上 |
短期大学 高等専門学校 専門学校「専門士」 |
2年以上 | 3年以上 |
高等学校 中学教育学校 専門学校(「高度専門士」「専門士」を除く) |
3年以上 | 4年6ヶ月以上 |
電気通信主任技術者資格者証の保有者 | 1年以上 | |
その他 | 8年以上 |
ここでの指定学科は、電気通信工学、電気工学、土木工学、都市工学、機械工学、建築学となります。
第1次検定
電気通信工学等 |
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施工管理法 | 電気通信工事の施工計画の作成方法及び工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理方法に関する概略の知識を有すること。 |
法規 | 建設工事の施工に必要な法令に関する概略の知識を有すること。 |
第2次検定
施工管理法 | 設計図書で要求される電気通信設備の性能を確保するために設計図書を正確に理解し、電気通信設備の施工図を適正に作成し、及び必要な機材の選定、配置等を適切に行うことができる一応の応用能力を有すること。 |
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令和5年度の2級電気通信工事施工管理技士の試験日程は下記の通りになります。
・書面申込:令和5年3月1日(水)~令和5年3月15日(水)
・インターネット申込:令和5年3月1日(水)~令和5年3月15日(水)
令和5年6月4日(日)
令和5年7月4日(火)
・書面申込:令和5年7月11日(火)~令和5年7月25日(火)
・インターネット申込:令和5年7月11日(火)~令和5年7月25日(火)
令和5年11月19日(日)
・第1次検定のみ:令和6年1月5日(金)
・第1次・第2次検定、第2次検定のみ:令和6年3月6日(水)
2級試験の受験手数料を下表にまとめました。
試験方式 | 受験手数料 |
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学科・実地試験 | 13,000円 |
学科試験のみ | 6,500円 |
実地試験のみ | 6,500円 |
2級電気通信工事施工管理技士の受験者数と合格者数は、以下の通りです。
実施年数 | 検定の種類 | 受験者数 | 合格者数 | 合格者率 |
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2019年 | 第一次検定 | 7,015人 | 4,045人 | 57.7% |
第二次検定 | 4,790人 | 2,007人 | 41.9% | |
2020年 | 第一次検定 | 3,648人 | 2,332人 | 63.9% |
第二次検定 | 3,240人 | 1,391人 | 42.9% |
取得方法としては、主に通信(WEB)講座を受講する方法や通学して受講する方法、参考書・問題集を使用して独学する方法の3点となります。自身の業務環境や生活環境に合った方法を選択して、勉強する時間をしっかり確保することが合格するコツとなります。
通信講座を受講する方法のメリット・デメリットは下表の通りです。
メリット | デメリット |
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通学して受講する方法のメリット・デメリットは下表の通りです。
メリット | デメリット |
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独学する方法のメリット・デメリットは下表の通りです。テキストと予想問題集を同時並行で進めるのが良策といえます。またYouTubeの解説動画を活用されることをお勧めします。多くの資格取得者が自身の体験談やわかりやすい講座解説をYouTubeに掲載していますので、活用しない手はないと思われます。PCやタブレット、スマホがあれば無料で勉強できます。
メリット | デメリット |
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通勤や休み時間などのスキマ時間を活用して勉強する場合はアプリの活用もオススメです。2級電気通信工事施工管理技士の試験対策の場合、下記のアプリがあります。
ただし、アプリでは詳細な解説がないことも多いので、1から学習する場合は参考書やテキストと併用して勉強する方が良いでしょう。既習部分を確認するために活用することをオススメします。
以上、2級電気通信工事施工管理技士の概要(業務内容・メリット)や試験内容、取得方法について解説しました。冒頭にも記しましたが、時代は電気通信環境の凄まじい進化により、あらゆるものがIoT技術によってネットワーク化されます。その時代の要請に応え、屋台骨を支える存在が電気通信工事施工管理技士となります。
現在、電気通信技術者は圧倒的に不足している状態です。今後のインフラ整備に貢献できる人材として、まずは「2級電気通信工事施工管理技士」の取得を検討されることをお勧めいたします。