2020年10月23日
建築に関わる資格の中で、建築施工管理技士は建築工事における施工管理のスペシャリストとして認識されている国家資格です。建築施工管理技士の資格には1級資格と2級資格があり、受験資格の条件や試験内容にはさまざまな設定や条件が決められています。
本記事では、1級建築施工管理技士の試験内容や資格取得方法について詳しく解説していきます。
建築施工管理技士とは、建築業法第27条の2項により国土交通大臣の指定する機関が実施する国家試験を合格した者が保有する資格です。ほとんどが建設業や設計事務所において、現場代理人として勤務している人が取得しています。
業務内容は工事現場の施工計画や工程管理の他に、品質管理や安全管理などの業務に従事します。建築施工管理技士は1級資格と2級資格により、それぞれ管理ができる工事現場の規模や管理内容も変わります。
建設会社が「特定建設業」や「一般建設業」の資格を得るには、施工管理の資格を有したものを在籍させなければなりません。また、重要性の高い公共工事などでは、建築施工管理技士を専任管理技術者として置く必要があります。
また、工事を請け負うための入札資格を得るために必要な経営事項審査に、施工管理技士の有資格者が在籍しているかどうかで評価点が変わります。このように、施工管理技士 の資格は企業にとっても極めて重要な資格になるのです。
建設業法により建設業の許可を受けている者は、工事の請負金額が4,000万円以上(建築一式の場合は6,000万円以上)の場合は監理技術者を置かなければならないため、1級建築施工管理技士は大規模建築工事に必ず必要な資格となります。
また、1級建築施工管理技士は建築工事の他にも、大工工事や左官工事、屋根工事、板金工事といったあらゆる建設現場で施工管理を務めることが可能です。そのため、多くの施工経験を得ることができるので、総合建設業のプロフェッショナルといえる資格です。
表中の年数には、指導監督的実務経験(現場代理人、主任技術者、施工監督、工事主任、設計監理者の立場で、部下・下請けに対して工事技術面を総合的に指導・監督した経験)年数1年以上を含むことが必要です。
実務経験年数は、学科試験前日までで計算してください。
区分 | 学歴等 | 受験に必要な実務経験年数 | ||
---|---|---|---|---|
指定学科卒業後 | 指定学科以外卒業後 | |||
1 | 大学 専門学校「高度専門士」 |
3年以上 | 4年6ヶ月以上 | |
短期大学 5年制高等専門学校 専門学校「専門士」 |
5年以上 | 7年6ヶ月以上 | ||
高等学校 専門学校「専門課程」 |
10年以上※1 ※2 | 11年6ヶ月以上※2 | ||
その他 | 15年以上※2 | |||
2 | 2級建築士試験合格者 | 合格後5年以上 | ||
3 | 2級建築施工管理技術検定合格者 | 合格後5年以上※1 ※2 | ||
4 | 2級建築施工管理技術検定合格後5年未満で右の学歴の者 | 短期大学 5年制高等専門学校 専門学校「専門士」 |
1の区分 | 9年以上※2 |
高等学校 高等学校「専門課程」 |
9年以上※2 | 10年6ヶ月以上※2 | ||
その他 | 14年以上※2 | |||
5 | 【注】 区分5の受験資格は、第1次検定のみ受験可能です。この区分で受験申請した場合、第1次検定合格後、今年度の第2次検定を受験することができません。 |
|||
2級建築施工管理技術検定第2次検定※合格者 ※令和2年度までは実地試験 |
実務経験年数問わず |
※1:主任技術者の要件を満たした後、専任の監理技術者の配置が必要な工事に配置され、監理技術者の指導を受けた2年以上の実務経験を有する方は、表中(※1)の記載がある実務経験年数に限り2年短縮が可能です
※2:指導監督的実務経験として「専任の主任技術者」を1年以上経験した方は、表中(※2)の記載がある実務経験年数に限り2年短縮が可能です
建築工事の施工に直接的に関わる技術上の全ての職務経験をいい、具体的には、下記(1)~(3)に関するものをいいます。
(1)受注者(請負人)として施工を管理(工程管理、品質管理、安全管理等を含む)した経験(施工図の作成や補助者としての経験も含む)
(2)設計者等による工事監理の経験(補助者としての経験も含む)
(3)発注者側における現場監督技術者等としての経験(補助者も含む)
なお研究所・学校・訓練所等における研究・教育および指導業務、設計業務、保守・点検業務等は認められません。
下記(1)、(2)のいずれかに該当する方
(1) | 当年度学科試験合格者および前年度の学科試験合格者 |
---|---|
(2) | 建築士法による1級建築士試験に合格した者で1級建築施工管理技術検定学科試験の受験資格を有する者 |
第1次検定では建築学 等、施工管理法、法規の科目があり、解答は択一式のマークシート方式です。
検定科目 | 検定基準 | 知識/能力 | 解答形式 |
---|---|---|---|
建築学 等 |
|
知識 | 四肢一択 |
施工管理法 |
|
知識 | 四肢一択 |
|
能力 | 五肢二択 | |
法規 | 建設工事の施工の管理を適確に行うために必要な法令に関する一般的な知識を有すること。 | 知識 | 四肢一択 |
第2次検定は第1次検定の合格者のみが受験可能となっています。解答は択一式のマークシート方式と記述式です。
検定科目 | 検定基準 | 知識/能力 | 解答形式 |
---|---|---|---|
施工管理法 |
|
知識 | 五肢一択 (マークシート方式) |
|
能力 | 記述 |
令和4年度に行われた1級建築施工管理技術検定の合格率は、第1次検定が46.8%、第2次検定が45.2%です。実地経験がある上での試験ということを考えると、難易度は高いほうだといえるでしょう。
1級建築施工管理技術検定の令和5年度試験日程は、下記の通りになります。
令和5年1月27日(金)~ 2月10日(金)
※第2次検定のみの方も共通
※インターネット申込(再受検のみ)は令和5年1月27日(金)9:00 ~ 2月10日(金)23:59
※書面申込は令和5年2月10日(金)消印有効
第1次検定:令和5年6月11日(日)
第2次検定:令和5年10月15日(日)
札幌・仙台・東京・新潟・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・沖縄
※近隣都市に試験会場を設定する場合があります。
第1次検定:令和5年7月14日(金)
第2次検定:令和6年2月2日(金)
受験者のほとんどが仕事に従事している方であるため、勉強時間も少ない中での受験となるでしょう。日中の業務終了後、夜間の専門学校や独学での勉強になると想定しますが、最近ではそれ以外の勉強法も増えており、主に下記の方法があります。
近年の通信講座では、専門講師によるDVD解説やオンライン授業などの教材が充実しています。基礎的な建築に関する授業から模擬試験の添削、本人に合わせた授業スケジュールの組み立てなども行ってくれる場合が多いです。
ただ、試験対策としては十分な内容ですが、授業料が高額なことがデメリットとして挙げられます。
これまで独学と言えば、お金をかけずに参考書や過去問をひたすらやり続けて試験に臨むという印象がありますが、実地試験には出題傾向やパターンなどがあるため、学科で合格して実地で落ちる可能性が高い勉強法でした。
しかし、最近はネット動画の普及によって試験内容の出題傾向や対策などがアップロードされており、独学でも実地試験対策ができるようになってきています。
ただ、好きな時に好きな場所で勉強することはできますが、疑問や不安な点が発生した場合は自分で調べて解消しなくてはならず、時間がかかってしまう点がデメリットとして挙げられます。
1級建築施工管理技士の資格保有者は、建設関連企業からの求人も多く、収入面でも満足いく給与が期待できます。しかしその分、施工管理のプロフェッショナルとして、施工管理や安全品質の他にも高い倫理観や公平性が求められます。
施工管理は、建設現場で多くの関係者のリーダー役として大変やりがいのある仕事ですが、その中でも1級建築施工管理技士の資格保有者は建設現場で大変期待される存在となるでしょう。