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鉄骨造(S造)のメリット・デメリットを解説!耐用年数はどれくらい?

2022年9月1日

建物の特徴を表すひとつの要素として「構造」が挙げられます。
構造には「鉄骨造(S造)」「鉄筋コンクリート造(RC造)」「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)」「木造(W造)」があり、建物の構造が異なると耐震性や耐火性などの性能が異なります。
その中でも今回は「鉄骨造(S造)」に着目し、メリットとデメリットを解説します。鉄筋コンクリート造(RC造)との違いにも触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

 

鉄骨造(S造)とは?

そもそも「鉄骨造」とは、建物の骨組みに「鉄」を使用した構造です。鉄は英語でSteelですが、その頭文字をとって「S造」とも呼ばれています。
素材の中でも安価に入る鉄は、丈夫で粘り強い特徴があるため、骨造の建物は耐震性が高く、かつ低コストで建てることができるといったメリットがあります。

実際に鉄骨造は、マンションやアパートなどの住宅でも多く採用されています。また、それだけでなく木造では難しいとされている倉庫や工場、体育館といった大空間建築物などにも使用されています。
建築費用、耐震性、耐火性、耐用年数、遮音性、デザインの自由度など、木造(W造)と鉄筋コンクリート造(RC造)の間に位置するような性能を持っているのが「鉄骨造(S造)」です。

 

鉄骨造(S造)の種類

鉄骨造は、使用する素材の厚みによって呼び方が変わります。厚さ6mm以上の材料を使うときは「重量鉄骨造」といい、厚さ6mm未満の材料を使うときは「軽量鉄骨造」と呼びます。
そこで以下では、「重量鉄骨造」と「軽量鉄骨造」の違いについて解説します。

重量鉄骨造

重量鉄骨造とは、骨組みとなる鉄骨に厚さ6mm以上の鋼材を使った構造を指します。鋼材に厚みがあるため、より高い強度を有した構造です。
また、柱や梁などの接合部を「ボルト」で接合するのが特徴のひとつで、超高層を含むマンションやビルなど、頑丈な建物の構造として採用されています。

特徴① デザインの自由度が高い

重量鉄骨造では、柱と梁を一体化して、筋交いを必要としない「ラーメン構造」が採用されます。そのため柱と柱の間隔も広く取れ、広い空間をつくることができるため、開放的な吹き抜けやホールなども実現可能です。

特徴② 防音性が高い

素材自体に厚みがあるので、壁が厚くなります。そのため防音性が高くなり、騒音問題などのストレスが軽減するでしょう。

特徴③ 建築費が高くなる

金属は、使用する素材の種類と長さと厚みで金額が異なります。つまり、素材の厚みが増すとその分部材の金額が高くなり、コストがかかってしまいます。
S造で建設費用を抑えたい場合は、次に紹介する「軽量鉄骨造」も合わせて検討すると良いでしょう。

 

軽量鉄骨造

軽量鉄骨造とは、骨組みとなる鉄骨に厚さ6mm未満の鋼材を使った構造を指します。重量鉄骨造より強度は劣るものの、その分コストを抑えて建設可能です。
また、軽量鉄骨の場合は柱や梁をボルト接合で固定する「鉄骨軸組工法(ブレース工法)」が使われています。これは木造の在来工法と同じ工法で、柱や梁が木の代わりに鉄骨で構成されています。
同じ鉄骨造でも、使用する素材の厚みが異なると工法も異なってきます。

特徴① コストが抑えられる

重量鉄骨造と比較すると、軽量鉄骨造は建設コストを抑えることができます。住宅の場合、木造とほぼ同じコストで建設でき、かつ木造よりも耐震性能が高いので人気があります。

特徴② 強度の高さと軽量を両立しており、耐震性が高い

部材自体が軽量であることに加え、丈夫な鉄骨を軸組・筋交いで補強しながら建設します。そのため、高い耐震性を実現します。

特徴③ 間取りに制限がかかる場合がある

軽量鉄骨造の場合、木造と同じく鉄骨軸組工法(ブレース工法)が使われています。軸組、筋交いを用いて建てることが多く、間取りに制限がかかる場合があります。
広々とした大空間や吹き抜けなどを作る場合は、重量鉄骨造も合わせて検討しましょう。

 

鉄骨造(S造)のメリット

鉄骨造は、様々な建物で採用されている構造です。メリットとしては主に「品質が安定していること」「コストが安いこと」「耐震性が高いこと」が挙げられます。
そこで以下では、鉄骨造のメリットについて解説します。

品質が安定している

一つ目は「品質が安定している」ことです。木造の場合、主要素材は「木」になります。木は天然素材であるため、含水率や木目に対する方向など様々な要素によって使えるものとそうでないものに分けられます。
しかし、鉄の場合は部材の質にバラつきが生じにくい素材です。さらに、組み立てる技術に熟練の職人の腕を必要としないため、建物の完成度も安定しています。

 

コストが安い

二つ目は「コストが安い」ことです。上記でも説明した通り、鉄骨造の中でも軽量鉄骨造は比較的部材が安価で手に入ります。
住宅であれば、木造とほとんど変わらない金額で建てることが可能です。その理由は、工場での生産がしやすい点にあります。同じ鉄骨でも重量鉄骨と比べると、軽量鉄骨は部材の大量生産が可能です。大量生産ができるので、工期も短く済ませることができ、人件費を削減することができます。その結果、コストを抑えることができるのです。

 

耐震性が高い

三つ目は「耐震性が高い」ことです。鉄骨造は、木造と比較すると耐震性が高い特徴があります。鉄骨造の住宅は、地震が起きると鉄がしなることでエネルギーを吸収します。
また、重量鉄骨は素材そのものが頑丈なので、構造体が壊れる可能性は非常に低いと言えるでしょう。地震や災害が多い日本では安心できる構造です。

 

鉄骨造(S造)のデメリット

上記では鉄骨造のメリットを紹介しましたが、もちろんデメリットも存在します。鉄骨造のデメリットとしては主に「防音性の低さ」「断熱性の低さ」「耐火性の低さ」です。
以下では、鉄骨造のデメリットについて、詳しく解説します。

防音性が低め

一つ目は「防音性が低い」ことです。鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)であれば、壁や床に使われるコンクリートが音をある程度遮断します。
その一方、鉄骨造(S造)の防音性は、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)と比べると低く、ある程度の音は聞こえてしまうため、防音性の低さはデメリットと捉えておいた方が良いでしょう。

 

断熱性が低い

二つ目は「断熱性が低い」ことです。鉄は木材と比べて熱が伝わりやすいという特徴があります。そのため、外気温の影響を受けて夏は暑くなりやすく、冬は寒くなりやすいというデメリットがあります。
また、断熱性が低いと結露が発生する可能性があります。急な温度変化が起こり、内部結露が発生すると鉄がさびてしまう危険性があります。断熱工事や防湿工事などを行って対策する必要があります。

 

耐火性が低い

三つ目は「耐火性が低い」ことです。鉄は熱に弱い性質があり、火事によって燃焼温度が上昇すると鉄骨の強度は低下します。木材のように燃えてしまうことはありませんが、耐火性能は決して高い素材ではありません。
万が一のことを考えると、耐火性の高い鉄筋コンクリート造(RC造)の方が安心です。

 

鉄骨造と鉄筋コンクリートの違い

「鉄骨造」とよく比較されるのが「鉄筋コンクリート造(RC造)」です。
鉄筋コンクリート造(RC造)とは、柱や梁などの主要構造部を鉄筋コンクリートで構築している建物構造で、高層マンションやビルなどで多く採用されています。

鉄骨造(S造)と鉄筋コンクリート造(RC造)の大きな違いは、使用素材にあります。鉄骨造(S造)は「鉄」を柱や梁に使用します。丈夫な素材ではありますが、コンクリートで構築している鉄筋コンクリート造(RC造)には劣ります。
また、鉄は熱に弱い性質があるため、 火事によって燃焼温度が上昇すると鉄骨の強度は低下します。
その一方でRC造は高い耐火性能を有しており、万が一火災が生じたときも主要構造部まで燃えることはありません。
しかし、鉄筋コンクリート造(RC造)はカビや結露が発生しやすいデメリットがあります。通気性は鉄骨造(S造)の方が優れているので、鉄筋コンクリート造(RC造)の場合は換気や通気の工夫が必要です。

 

鉄骨造(S造)の耐用年数はどれくらい?

続いて、鉄骨造の耐用年数と寿命について解説します。

法定耐用年数

鉄骨造の法定耐用年数は34年とされています。

 

実際の寿命

実際の寿命はその建物の状態によって異なります。立地条件やメンテナンスの頻度によって異なるので、「鉄骨造だから◯年間はもつ」とは一概には言い切れません。

 

鉄骨造(S造)の寿命を伸ばすには?

最後に、鉄骨造の寿命を伸ばす3つのポイントを紹介します。

しっかりとメンテナンスを行う

一つ目は「しっかりとメンテナンスを行う」ことです。建物の補修はもちろんのこと、定期点検を行って不具合が起きそうな場所をあらかじめ修繕しておくことが大切です。
大きな破損や故障があってから修繕となるとコストもかかりますし、場合によっては修復が難しいこともあります。定期的なメンテナンスを心掛けましょう。

 

外部環境を考慮する

二つ目は「外部環境を考慮する」ことです。日当たりや風通しなど、外部の環境も建物の寿命に大きく関係してきます。
寿命を伸ばすためには、条件のよい立地が必要不可欠であるといっても過言ではありません。

 

大規模な修繕を行う

三つ目は「大規模な修繕を行う」ことです。10年や15年などの節目には、大規模工事を行って不具合を見直すことも必要になります。
部分的に補修することも大切ですが、長い年数が経過したタイミングには修繕を検討してみましょう。

 

まとめ

S造は、鉄を使った構造で、マンションや住宅だけでなく、大規模な空間で使われています。鉄骨造といっても「重量鉄骨造」と「軽量鉄骨造」の2種類があり、建物の特徴に合わせて建て方を選ぶことができます。もちろん、それぞれにメリット・デメリットがあるので、特徴を抑えて適した方法を検討するようにしましょう。
さらに、構造は他にもRC造やSRC造、W造などもありますので、合わせて覚えておくことをオススメします。

 

 


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