2022年10月13日
この記事では、建築施工管理技士の概要や仕事内容、1級と2級の違い、求められるスキル、転職先、取得するメリット、試験概要、勉強方法について解説します。
建築施工管理技士の資格を取得することは、建設現場におけるスキルアップ・キャリアアップ・年収アップに有利にはたらきますので、建設業界に従事されている方やこれから従事する方はぜひ読んでみてください。
建築施工管理技士は国家資格であり、建設現場などで施工計画を作成し、施工管理業務(工程管理・原価管理・品質管理・安全管理)を担う者を指します。
建築施工管理技士は、建設工事などの設計図や施工図などを確認して工事の全体像を把握し、以下などの業務を行いながら工事の完成を目指します。
1級と2級とでは、扱える建設工事の規模が異なります。
1級資格保有者は扱える工事の規模に制限がなく、大規模な建設現場を扱うことができ、一方で2級資格保有者は、主に中小規模(請負金額4,000万円以下(建築一式工事の場合は6,000万円以下))の建設現場を扱うことができます。
また、建設業法に規定される許可要件と経営事項審査の観点からそれぞれの違いを解説していきます。
建設業法に定められる許可要件の違いとしては、以下の資格を満たす者として扱われます。
経営事項審査における加点に違いがあり、以下のように評価されます。
建築施工管理技士に求められるスキルは、主にコミュニケーション能力やリーダーシップ、危機管理能力などが挙げられます。
建築施工管理技士は、現場で作業する職人や発注者であるクライアント、勤務先の建設会社、現場の近隣住民などと協議・連絡を行うなど様々な人と関わるため、コミュニケーション能力は必須となります。
建設現場での技術上の問題点や安全管理上の課題などをくみ取りながら、社内調整を行った上で解決を図り、クライアントの了解を取り付けるなどの作業が日常的に発生します。
施工管理者は建設現場で指揮を取る立場であるため、下請け業者や職人などに指導を行う上でリーダーシップが必要になります。
万が一指揮・指導が十分に行えない場合は現場の士気にも影響し、思わぬ事故やトラブルの原因になりかねませんので、重要なスキルと言えるでしょう。
様々な建設機械や建設資材が現場内を行き交いますので、至るところに危険が潜んでいます。
そのため、施工管理者は事前の事故防止対策を施しながら現場内を隈なく点検・確認し、事故が想定される個所を素早く察知する能力が必要になります。
建築施工管理技士の資格を取得することで、責任のあるポジションに就けること、転職に有利になること、収入アップにつながるなどのメリットがあります。
建築施工管理技士は、建設現場におけるハード・ソフトの知識を体系的に身につけているため、建設現場の責任者に就ける機会が多くなります。
また、責任者になると監督業務の実績としての経歴にも反映できるため、自身のキャリアアップにも繋がります。
建設業界全体が慢性的な人手不足の状態にあり、特に現場代理人や現場監督者を担う責任者クラスの人材不足が顕著です。
建築施工管理技士の資格保持者は主任技術者や監理技術者になれる資格があり、建設現場などでは貴重な存在となります。現場経験が豊富な技術者であれば、大手建設会社をはじめ建設業界全般に求められる人材となるため、転職に有利にはたらきます。
責任あるポジションを数多く経験すると、自身の建築工事におけるスキルアップ・キャリアアップに繋がるため、勤務する会社から高く評価されるようになり、年収アップに繋がりやすくなります。
また、上記のように転職にも有利となり、高い報酬で迎える建設会社も出てくるため、建築施工管理技士の資格は年収アップに必須といえるでしょう。
ここでは、1級・2級建築施工管理技術検定の試験内容や受験資格、試験日、合格率、難易度、受験料について解説します。
1級・2級建築施工管理技術検定の試験内容は、下記の通りです。
1級建築施工管理技術検定の試験内容は、下表の通りです。
検定区分 | 検定科目 | 知識・能力別 | 解答形式 |
---|---|---|---|
第一次検定 | 建築学等 | 知識 | 四肢択一 |
施工管理法 | 知識 | 四肢択一 | |
能力 | 五肢択二 | ||
法規 | 知識 | 四肢択一 | |
第二次検定 | 施工管理法 | 知識 | 五肢択一 |
能力 | 記述 |
※参考元:「令和4年度1級建築施工管理技術検定 第一次検定・第二次検定 受験の手引き」一般財団法人 建設業振興基金
2級建築施工管理技術検定の試験内容は、下表の通りです。
検定区分 | 受検種別 | 検定科目 | 知識・能力別 | 解答形式 |
---|---|---|---|---|
第一次検定 | ― | 建築学等 | 知識 | 四肢択一 |
施工管理法 | 知識 | |||
能力 | 四肢択二 | |||
法規 | 知識 | 四肢択一 | ||
第二次検定 | 建築 | 施工管理法 | 知識 | 四肢択一 |
能力 | 記述 | |||
躯体 | 躯体施工管理法 | 知識 | 四肢択一 | |
能力 | 記述 | |||
仕上げ | 仕上げ施工管理法 | 知識 | 四肢択一 | |
能力 | 記述 |
※参考元:「令和4年度2級建築施工管理技術検定 第一次検定・第二次検定 受験の手引き」一般財団法人 建設業振興基金
1級・2級建築施工管理技術検定の受験資格は、下記の通りです。
下表にあげる受験資格の区分イ~ニのいずれかに該当する者は、第一次検定を受験できます。
区分 | 学歴・資格 | 建築施工管理に関する実務経験年数 【1年以上の指導監督的実務経験を含むことが必要】 |
||
---|---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |||
イ | 大学 (高等学校の「高度専門士」) |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6ヶ月以上 | |
短期大学 高等専門学校(5年制) 専門学校の「専門士」 |
卒業後5年以上 | 卒業後7年6ヶ月以上 | ||
高等学校 中等教育学校(中高一貫校) 専門学校の専門課程 |
卒業後10年以上 | 卒業後11年6ヶ月以上 | ||
その他(学歴は問わず) | 15年以上 | |||
ロ | 二級建築士試験合格者 | 合格後5年以上 | ||
ハ | 2級建築施工管理技術検定 第二次検定合格者 |
合格後5年以上 | ||
2級建築施工管理技術検定第二次検定合格後、実務経験が5年未満の者 | 短期大学 高等専門学校(5年制) 専門学校の「専門士」 |
上記イの区分参照 | 卒業後9年以上 | |
高等学校 中等教育学校(中高一貫校) 専門学校の専門課程 |
卒業後9年以上 | 卒業後10年6ヶ月以上 | ||
その他(学歴は問わず) | 14年以上 | |||
ニ | 2級建築施工管理技術検定第二次検定合格者※1 | 実務経験年数は問わず |
※参考元:「令和4年度1級建築施工管理技術検定 第一次検定・第二次検定 受験の手引き」一般財団法人 建設業振興基金
※1:区分ニの受験資格は、第一次検定のみ受験可能。この区分で受験申込した者は、第一次検定合格後、今年度の第二次検定を受験不可。第二次検定を受験するには、翌年度以降、上記の区分イ~ハのいずれかの受験資格で新規受験申込する必要あり。
下記の①~④のいずれかに該当する者は、第二次検定を受験することができます。
下表にあげる受験資格の区分イ~ニのいずれかに該当する者は、第一次・第二次検定を受験できます。
区分 | 学歴 | 建築施工管理に関する実務経験年数 | ||
---|---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |||
イ | この区分は受験種別「建築躯体」「仕上げ」が受験可能 | 大学・専門学校の「高度専門士」 | 卒業後1年以上 | 卒業後1年6ヶ月以上 |
短期大学 高等専門学校(5年制) 専門学校の「専門士」 |
卒業後2年以上 | 卒業後3年以上 | ||
高等学校・中等教育学校(中高一貫校) 専門学校の専門課程 |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6ヶ月以上 | ||
その他(最終学歴問わず) | 8年以上 | |||
技能士(職業能力開発促進法による技能検定合格者) 技能士の資格は受検種別:建築へ受験申請は不可 |
技能検定の合格年度と級別 | |||
ロ | 受験種別「躯体」はこの区分での受験も可能 | 【検定職種】[ ]内は選択科目 ・鉄鋼[構造物鉄鋼作業]・とび ・ブロック建築・型枠施工・鉄筋組立て ・鉄筋施工[鉄筋組立作業] ・コンクリート圧送施工 ・エーエルシーパネル施工 |
平成15年度以前に左欄の検定職種に合格した者 | |
平成16年度以降に1級の左欄の検定職種に合格した者 | ||||
平成16年度以降に2級の左欄の検定職種に合格した者 4年以上の実務経験を有する者 |
||||
ハ | 受験種別「仕上げ」はこの区分での受験も可能 | 【検定職種】 注:[ ]内は選択科目 ・建築板金[内外装板金作業] ・サッシ施工・石材施工[石張り作業] ・ガラス施工・建築大工 ・石工[石張り作業]・表装[壁装作業] ・左官・タイル張り・塗装[建築塗装作業] ・畳製作・れんが積み・防水施工 ・熱絶縁施工・スレート施工など |
平成15年度以前に左欄の検定職種に合格した者 | |
平成16年度以降に1級の左欄の検定職種に合格した者 | ||||
平成16年度以降に2級の左欄の検定職種に合格した者 4年以上の実務経験を有する者 |
※参考元:「令和4年度2級建築施工管理技術検定 第一次検定・第二次検定 受験の手引き」一般財団法人 建設業振興基金
1級・2級建築施工管理技術検定の試験日は下表の通りです。
検定の種類 | 1級建築施工管理技術検定 | 2級建築施工管理技術検定 (第一次・第二次同日受験) |
---|---|---|
第一次検定 | 令和4年6月12日(日) | 令和4年11月13日(日) |
第二次検定 | 令和4年10月16日(日) |
1級・2級建築施工管理技士の2011年~2021年までの学科・実地試験合格率を下表にまとめます。
検定年度 | 1級建築施工管理技術検定 | 2級建築施工管理技術検定 | ||
---|---|---|---|---|
第一次検定 (学科試験) |
第二次検定 (実地試験) |
第一次検定 (学科試験) |
第二次検定 (実地試験) |
|
2011年 | 37.3% | 40.4% | 47.7% | 34.6% |
2012年 | 51.0% | 34.4% | 56.1% | 34.1% |
2013年 | 47.0% | 41.4% | 40.2% | 30.1% |
2014年 | 41.6% | 40.2% | 47.9% | 33.5% |
2015年 | 43.6% | 37.8% | 48.5% | 32.7% |
2016年 | 49.4% | 45.6% | 51.9% | 38.9% |
2017年 | 39.7% | 33.5% | 38.7% | 28.9% |
2018年 | 36.6% | 37.1% | 25.9% | 25.2% |
2019年 | 42.7% | 46.5% | 31.6% | 27.1% |
2020年 | 51.1% | 40.7% | 35.0% | 28.2% |
2021年 | 36.0% | 52.4% | 49.0% | 35.1% |
平均 | 43.3% | 40.9% | 43.0% | 31.7% |
1級建築施工管理技術検定については、上表より過去11年間の平均合格率は以下の通りで、難易度としては並の試験といえます。
2級建築施工管理技術検定については、上表より過去11年間の平均合格率は以下の通りで、難易度としては並の試験といえます。
1級・2級建築施工管理技術検定の受験料は、下表の通りです。
検定の種類 | 1級建築施工管理技術検定 | 2級建築施工管理技術検定 (第一次・第二次同日受験) |
---|---|---|
第一次検定 | 10,800円(消費税非課税) | 5,400円(消費税非課税) |
第二次検定 | 10,800円(消費税非課税) | 5,400円(消費税非課税) |
建築施工管理技士の資格取得を目指す方は、建築工事現場に携わる多忙な技術者が多くなるため、勉強時間の確保が鍵となります。
合格に必要な勉強時間は、建築工事施工に対するキャリアの違いにより異なります。
勉強時間の目安を下表にまとめます。
受験者のレベル | 合格に必要な 総勉強時間の目安 |
日常の勉強時間の目安 | |
---|---|---|---|
平日 | 土日祝 | ||
建築工事の経験・知識が無い受験者 | 300時間、6ヶ月間 | 1~2時間 | 2~4時間 |
他の施工管理技士の資格所持者 | 200時間、4ヶ月間 | 1~2時間 | 2~4時間 |
一級・二級建築士資格所持者 | 100時間、3ヶ月間 | 1時間 | 1~2時間 |
第一次検定(学科試験)は、過去の出題問題と同様な問題が出題されることが多くなります。
過去10年間の出題問題を繰り返し解き3回行うと、ほぼ把握でき合格の可能性が高くなるでしょう。
第二次検定(実地試験)は、記述式の問題があるため、出題されるテーマや文章の構成を把握する必要があります。
テーマについては、施工計画、品質管理、工程管理の3つのテーマに関するいずれかが出題されます。
構成については、以下の記述を行います。
建築施工管理技士の概要や仕事内容、1級と2級の違い、求められるスキル、転職先、取得するメリット、試験概要、勉強方法について解説しました。
勉強時間を確保し、過去問を3回繰り返して完全に理解できれば、合格する可能性が非常に高くなる資格です。
建築業界における自身のスキルアップ・キャリアアップ・年収アップを図るためにも、建築施工管理技術検定に挑戦し、建築施工管理技士の資格を取得されることをおすすめいたします。